緊急事態宣言が全国的に解除されましたが、私の学門の日々は当然続いています。
学問に関する昔の本を取り寄せては研究しているのですが、先日また、日本における中国武術研究の第一人者、K先生の本を入手いたしました。
前回は孫禄堂先生の「拳意述真」の翻訳&解説本を読んだのですが、今回は少林派の「少林拳術秘訣」を翻訳した物を手にしました。
これはね、先の物と較べるとだいぶお手に取りやすい価格となっています。
プレミアが少ない。
やはりね、日本人が大好きないわゆる内家拳の本と、南派少林拳の本だと言う違いが効いているのでしょう。
私の所には初め、原文の「宗法図説」がAIにおススメされてきていました。
そこから探っているうちに、この宗法図説とその文章パートの少林拳術秘訣が一冊に復元された物が日本語訳されているということが分かって、驚喜しながらK先生の訳書に触れた次第です。
さすがはK先生、研究者として本当に一流です。
この本は近代の、清末、明初の中国武術最隆盛期における非常に重要な書物として中国では普及しています。
いわば、当時の最先端の中国武術のアップデートの具体であると言ってもいいような書物です。
内容は、尊我斎主人と号した革命拳士らしき著者による往時の中国武術観のオンタイムの記述です。
すなわち、いま行われているハードコアな中国武術が成立した時代の原点の内容が書かれている。
そしてその当時の最先端のハードコアな中国武術とは、すなわち南派少林拳です。
革命結社の武術であるので、これは当然だと言えます。
K先生、ありがとう。
マンガや思い込みを土台とした日本人の中国武術観とは一線を画した、本当の現地の中国武術観点と言う物がこの書より確認できます。
K先生はちゃんと、そこが分かっていた人です。
若い頃に中華圏で修行をし、南派武術に触れたのだけれどやっぱり太極拳に行ってしまった。
知識としては触れているのだけど自分ではやらない。
そう、そこはやっぱりK先生、研究の部分は大いに信頼が出来るのですが、個人の部分はまぁ、えぇ、あまり期待をし過ぎてはいけない。
この本に目をつけて翻訳しているのはさすがというところなのですが、端々の翻訳や訳注に関しては、逆の部分でさすがという期待を裏切らない一貫性が読み取れます。
ですのでこの本は非常に重要な資料としてお勧めなのですが、同時に訳者による実技や思想への意見に関しては割り切ってね、というところがあります。
あくまで尊我斎先生自身が書いた部分に関してだけお勧めします。
つづく