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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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エンドルフィンの魔力

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 この数か月、「狂気とバブル」という19世紀に書かれた大著を読んでいるのですが、これは過去西洋で起きた集団ヒステリー現象を扱って大衆の愚かしさを研究した書籍です。

 もちろん、時代的には大衆と言う言葉を生み出した「大衆の反逆」よりも前の時代のことを書いているので作中にそのような言葉は使われていません。

 どちらかというと「愚民」というオブラートゼロの言葉が頻出しています。

 このような、愚かな人々(とダイレクトに本文中で繰り返されている)の愚行を様々に取り扱っているのですが、その中に「錬金術」を巡る狂騒も取り扱われています。

 多くの人々がそれによって財産を喪失して行きました。

 卑金属から金を生み出すと言う方法がどれだけ中世の人々を魅了していたかということについてはあきれ果てるほどですが、しかし、これは当時の化学であり、実際に近年のニホニウムの発明のように元素の融合などは可能であることが証明されていますので、あながちただの迷信や愚行とは言い切れないように思います。

 大英帝国時代にはダイヤモンドの発掘で世界情勢が大揺れとなりましたが、現代ではジルコニアのように人工ダイヤモンドが精製されていますので、中世における錬金術に関しては19世紀人が見るように「愚行」ではなくて「惜しい」という範疇であったようにも思われます。

 このような化学変化を主体とした西洋の錬金術に対して、アジアでは体内の化学物質と神経回路の働きを融合することで身体の内側に丹薬を精製する、練丹術が発展しました。

 こちらもダイレクトに水銀をがぶ飲みして死者が出るような「愚行」が有名ですが、やはりこちらに関しても「惜しい」ないし「訓練を積んでないと難しい」の要素が強いように思われます。

 一説には記録に残る最古の開頭手術はインドで行われており、患者は瞑想によって麻酔としたのだそうです。

 そのようなことが可能なのか、とも思われますが、人体には脳の働きで麻薬を創り出す能力が備わっています。

 いわゆる脳内麻薬として有名なエンドルフィンは、内在性オピオイドと呼ばれていて、モルヒネよりはるかに強力な麻薬効果があると言われます。

 オピオイドと言えばアヘンですね。現在でもアメリカでは鎮痛剤として処方されるオピオイドで中毒者が大量発生して社会問題となっています。

 BLM運動のアイコンとなったジョージ・フロイド氏もオピオイド中毒であったと死後夫人が証言したと言う話もあります。

 練丹術という体内で薬品を精製する術の発想そのものは、このように否定しがたい物があります。

 生物の営みというのはなんでも化学変化ですからね。

 このエンドルフィン、恋愛時、つまり発情時には大量に脳内で分泌されるのだと言います。

 多くの人、特に経験的に未熟な人が恋愛に過大な価値を抱くのはこの麻薬の作用だと言っても差し支えないのではないでしょうか。

 また、精神疾患の人がえてしてセックスや恋愛に依存しがちだと言うのも実は単に脳内麻薬の作用による、オピオイド中毒であるということが言えるように思います。

 要するに、自作自演です。

 英語で「ドラマ・クィーン」というスラングがありますが、それはそのように恋愛で大騒ぎすることで快楽を得ようとする自作自演の演技性人格メンヘラのことです。

 まぁ、クィーンと言うからには女性限定の言葉として設定されていますが、別に男性がならないと言うことではありません。

 しかし実際、この脳内ホルモンの働きには男女差があるらしく、女性は比較的高年齢になっても同じ作用が続くらしい。大岡越前の「骨になるまで」という奴ですね。

 赤いちゃんちゃんこのおばあ様方が十九二十歳の子供と同じく、韓流ドラマに夢中になれるのはそういうことなのでしょうね。

 それを横目におとう様方はいい歳をして何を、とあきれ顔なのでしょうが、実際に男性の方はこの恋愛作用によってのエンドルフィンの分泌が、老化で減少しやすいのだそうなのです。

 だからおばあさま方が若い韓国俳優に夢中になれるのに、爺さん方は若い女の子タレントを見て「誰が誰やら区別が付かん」となってしまう。

 これは実際に私が最近経験したことで、コンビニに貼られている大所帯アイドルの人たちの顔が、一人の人を複数回撮影したようにしか見えなくて……。

 日ごろからテレビを観ないので余計にそうなのかもしれません。

 そして、このように発情エンドルフィンの分泌が弱くなる一方の老人男性ですが、そうなるとどんどん老人性鬱のようになってしまう。

 代わりに、他の現象への反応でこの快楽物質の分泌を促すように自然にスライドするようなのですが、その現象の一つに「水平線から仲間がやってくると快楽物質が分泌される」という奇妙な物があるそうです。

 これ、物凄く原始的な動物的本能ですよね。

 男性の脳と言うのは収穫と組織化によって生存に適応してきたので、習性的にそう出来ているそうなんですね。

 東京五輪の時のブルー・インパルスによる編隊飛行と言うのは、かなり心理学的に計算された洗脳だったと言いますが、まさにこの男性の脳にダイレクトに響いてしまう物です。

 私が大好きだった、必殺仕事人シリーズの出動シーンや、歌舞伎のせり上がりもこの仕組みが働いているのでしょう。

 また、格闘技の入場シーンもこれでしょうし、サッカーやラグビーという愛国性の強いスポーツに関しては競技そのものがこの作用によって成り立っていると言っても良いかと思えます。

 昨今、近所の踏切や陸橋などにもカメラを構えた鉄道ファンの姿を見かけますが、これも同じ要素が作用しているためか、撮っているのは男ばかりという印象があります。

 私もマーヴェル映画などで画面の奥から沢山のヒーローたちが助っ人に駆け付けるシーンには胸が奮えて涙が溢れそうになります。

 これの最も直接的な例は、各国の軍事パレードでしょう。

 こういったことで高揚するのは、ホモ・サピエンスという生物の持つ本能で、自然なことです。

 だからこそ、それを自覚して相対化し、制御が効くようにしている人間とそうでない人間とでは、深みが変わってくるのではないでしょうか。

「目を覚ます」とは、そういうことだと思います。


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