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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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保守と言う信仰 表

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 夫婦別姓は、なぜ選択制にしても許されないのでしょうか?

 現在世界的な潮流となっているポリティカリティ・コレクトの倫理観においては、ジェンダーに関して「他人のジェンダーがどうあってもあなたの人生は関係なく続くのでほおっておけばいい」という見解が模範的な姿勢だとされています。

 多様化は是とされていて、これを「世の中が多様化しちゃってるでしょう。いやねえ」と言うような人はバカだと見なされることでしょう。そして私は実際にこういうことを平気で言い、在日の人に差別的発言を吐くおばさんに出くわしたことがあります。分数を書くことも出来ないような人でした。

 ですので、この夫婦別姓の否定が現在の日本の与党政権およびその支持層において規定されていることは、単純にポピュリズム、つまり、上記のおばさんのようなレベルの人の方が人数として多いからなのであろう、と私は大衆蔑視的見立てをしていたのですが、どうも別角度からの見識があるようなのですね。

 この、現日本政府与党の総裁選が行われた時に、四人の候補者の内、三人が「我こそは真の保守である」と言う演説をしました。

 だから保守政党の同胞諸君よ、我に投票され給え、という論旨ですね。

 この保守思想の中核組織である、日本会議と言う団体に取材に行ったジャーナリストの人がおりまして、この方が「なぜ選択的夫婦別姓に反対なのですか?」ということを沢山の会議員にインタビューしてアンケートを取ったそうです。

 その結果を大要してお話されていたのですが、それはつまり「保守思想から見た日本と言う国体の理想形は、天皇家を主軸としたイエ組織であり、そこに家父としての天皇を抱いている社会である」ということだからであるそうです。

 イエという単位で国民がまとまっていることが理想とされているために、その氏族が別姓になるのは単位が狂うからだ、というほとんどメートル法かポンドヤード法か、というようなお話であると。

 それってまぁ、雑な利便性での効率上の問題であり、もっと言うならそもそも「信仰上の理由」なんですよね。

 確かに、国や民族には固有の文化があり、文化とは信仰も含みます。

 万世一系という信仰を中核として、それを主軸とした民族国家を「保守」したいという信仰は一つの文化として筋が通っています。

 しかし、それと政治は別のこと。

 いわばこの信仰は白人優位主義となんら変わらない物であり、イエ単位に含まれた日本国民を優位とする選民思想以外の何物でもない。

 もちろん、この愛国、愛自民族感情と言う集団的ナルシシズムはおよそあらゆる民族国家が持つことでしょう。

 ユダヤ人や共産圏の人以外はみんな持つ物かもしれません。

 多民族国家、移民国家としてその集団的ナルシシズムを乗り越えた時に、恐らくは我々は次の段階に文化的成熟を迎えるのではないでしょうか。 

 ある宮司さんによると、神道と言うのは宗教では無くて信仰であると言います。

 戒律も教えも無いからです。

 ただ感謝し、恐れるという世界観そのものであって、だから何をする、というような論理的、人工的な物ではありません。

 これは感情と直結した物です。

 キリスト教は宗教なので、宗派があり、聖書の読解に多様性があります。

 仏教にもたくさんの解釈による宗派があります。

 イスラム教では神学者と言う人たちがおり、時代ごとに新しく出来た物や現象に対してコーランの解釈ではどう見るべきか、という会議を繰り返しているそうです。

 これらの「宗教」は教義があるのでこのような対話の余地がある。

 しかし、信仰、感情にはそのように対話するべき主体がそもそも存在していない。

 この部分が、対話が出来ない日本社会と言う構造とダイレクトに繋がっているのではあるまいか。

 そしてそれを前提として、愚民化教育が行われている。 

 天皇制信仰で国体を保守しようなどとは、まさに戦時の気風そのものではありませんか。

 確かに、民族国家としての世界的立脚を目的としていた時代には、そのようなことが必要だったのでしょう。

 しかし、こうして少子化が進み、国民総生産が著しく低下し、国力は右肩下がりの一方の未来しか見えないいま、明らかにこのスタンスは脱却すべきではあるまみでしょうか。

 移民を受け入れて国力を回復させる以外に方法は無いように思われます。

 総裁選で選ばれた新総理が、COP26において「燃料の廃棄物は技術的に現状不可能な方法だけどそのうち何か考えて地面に埋めてその堆積物はアジア諸国に始末させる」などと言い出して不名誉な賞を受賞してしまったこともまた、この保守思想の姿勢がもはやまったく現実の世界情勢で通用しないことの現れなのではありますまいか。

 

                                                                        つづく


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