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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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段階に関して見えてきたもの

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 老師から色々と良い物を教わり続けている中で、私の見識や見立てには色々な変化が起きています。

 そのうちの一つに「あれ、蔡李佛、通臂なんじゃね?」という物があります。

 これはどういうことかと言いますと、元々、現在の中国武術には回族武術の影響が土台にあり、その回族武術には段階として四つの物がある、という説が中国の研究者から出ている、というところからのお話です。

 このお話の前提になっている回族武術とは何かといいますと、これはすなわち、漢化したインド武術です。

 インド武術と言うと南インドのカラリパヤットが即連想されると言う方も多いと思いますが、これは実際には近代に至って編纂されたいわば現代武道であり、そのルーツは北インドに伝わっていたアーリア系インド人の武術だと言います。

 この武術が南進、東進した結果がカラリパヤットとなり、中国武術となった、というのです。

 いわゆる中国武術というのは、これらインド武術が仏教と一緒に伝来した物です。

 これがいわゆる少林拳。

 それをアップデートする形で、中国で言う唐の時代にイスラム教徒の印僑(インド系移民)によって中土に持ち込まれたのが回族武術です。

 四つの段階というのは、長拳の段階、通臂拳の段階、八極拳の段階、心意拳の段階だ、と言います。

 現在ではそれぞれ別の門として広まり、各自発展していますが、有名な馬氏のように長拳を基本として、通臂拳の一派である劈卦拳を中心とし、八極拳も併せ持っている、という段階を整理して通備武術と称している例もあります。

 これはやはり、そもそもにそのような段階があったからだと思われます。

 八極拳ブームを作った李氏の八極拳でも、弾腿と言う長拳が八極拳のルーツなのではないか、と言う説が出ており、やはりそこが基本となっているようです。

 また、のちに八極拳に進んでからも、劈卦拳を合わせて行うというので、やはりここにも同じく回族武術の段階モデルを見ることが出来ます。

 これら四段階の内、三段階目の八極拳はある一定の意味において、用勁の段階だとも聞きます。

 用法においては通臂の段階で充分なので、その招式に八極拳の用勁を持ち込んでもいいと言います。

 心意拳に至っては、ある先生は完全に「これは招式の用法では無くて発勁の運用のための練習であり、招式としては他の拳法で行う」とさえ言っています。

 心意拳には「一式分かれば百式が分かる」であったり「実戦には形はない」というような教えが伝わっています。

 形は長拳でも通臂拳でも良い。

 実際、心意拳の単式には通臂拳と同様の動きが非常に多く見られます。

 こういった回族武術モデルが中国武術のある種の規矩として浸透しているということですが、実際に私の伝えている鴻勝蔡李佛拳でも、初学の段階では通臂っぽく、のちに八極拳のようとも言える肘、膝の中節を主体とした段階があり、最後には心意拳の段階に至ります。

 うちに来ている生徒さんには、その三段階を持って教伝をしています。

 とはいえ、このような段階意識があるとはいえ、一般的にはそれぞれの門には主体となる段階があります。

 いくら八極拳が最終的には静かな物になるとはいえ、表看板、最も広く行われる段階と言うのはやはり激しい様態の段階でしょう。

 台湾のある先生は、長拳にはすべてが備わっていると言い、そのまま最後まで学べば、八極拳的段階にも心意拳的段階にも通ずるとと述べています。

 八極拳は弾腿から生まれたと言うのならそれはまさにその通りなのでしょう。

 しかし実際には、長拳の最も長拳的な段階はと言えば、長拳として行う段階でしょう。

 おそらくは、それらは学習効率の問題だと思われます。

 数学力が上がれば、すべてを足し算で計算も出来るが掛け算を使った方が早い、というようなことではないでしょうか。

 ひらがなでも全文書けるけど漢字も使う、とか。

 そういう意味で言うなら、恐らくは蔡李佛の最も広いフェイズをしめる段階は、もしかしたら通臂の段階ではないか、と思う次第です。

 私は師父から「通臂拳と似ているが絶対にそのようにやってはいけない。中身がまったく違う」と教わりました。

 これは師父もその師父から教わったとのことでした。

 確かに、いまは両者をやりますので、まったく違うものであることがわかっています。

 しかしそれは伝播の結果であり、私が早い段階で心意拳的用勁を教わったからそうなのであって、多くの派においてはかなり共通性が高い、あるいは影響が大きかったのではないかなあ、と思っていたりもします。

 特に、招式に関して。


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