キリスト教的な生き物の分類によって、個人の尊重や生命の尊重という物がある、ということまで前回を書きました。
それから、そのような概念が人種差別の由来となっている、ということも。
プロテスタントの信仰においては、人類(自分たち清教徒白人)は神に似せて作られた生物としての役割を持っていると考えられます。
これは神の代行者として地上を開拓し、神の威光を世界の隅々にまで広めるという使命がこの思想には伴います。
彼ら白人社会、およびビクトリア朝イギリスの世界を股に掛けた冒険主義というのはこの考え方に下支えされています。
そこで彼らは彼等から見た「未開」の地の人々を教化し、彼らの社会の疑似的なコピーを拡充してゆきます。
これが彼らの帝国主義です。
この発想は、イギリスから独立したプロテスタントの国であるアメリカ合衆国にそのまま引き継がれます。
最初の移民であるホワイト・アングロサクソン・プロテスタント(WASP)の人々はアメリカを自分たちの聖地として開拓してゆきます。
競技において勤労が信仰の証とされて居るので、黒人奴隷を労働力として綿花産業に精を出します。
この黒人奴隷の立場は、もちろん神が自分たちの労働力として与えてくださった「家畜」だと言うことになります。
WASPの人々はまた、えげつないだまし討ちの契約によって先住民から土地を巻き上げることも常套手段でした。
これもまた、どのような不平等な契約であれ契約であればよいと言う彼らの生活思想に基づいていることは明白です。
このようにして彼らの開拓、侵略活動を神の計画だと見なす考え方を「予定説」と言います。
聖書の教えに基づいて、彼等教徒はやがて地上に信仰の世界をくまなく広げてゆき、いつしか神が現れてジーザスが復活し、信徒を王国に導きたもう、というのがその概要です。
根源的には、これを信じて彼らは経済活動を行っているのです。
先に、日本の保守層の政治姿勢は信仰に由来していると書きましたが、資本主義も同じです。
この白人優位主義を伴わずして本当には資本主義は理解しえない。
しかし当然、時代が経つにつれてその考え方には疑問が差しはさまれるようになってきました。
これはアメリカにおける白人種の数が減り、少数民族かしていることと比例しています。
こうして世界観を揺るがされて来たWASPの末裔たちは危機意識を感じ、結託して保守的政治姿勢を強固にしようとします。
それがトランプ支持者の活動です。
彼らの多くは熱心なキリスト教徒で、原理主義者です。
アメリカの多くの土地では、メガ・チャーチと呼ばれる資本的教会が強い影響力を持っています。
これはケーブル・テレビでの活動を土台とした物で、テレビ伝道師と呼ばれるような人々がまるでテレビショッピングのように労働を推奨し、寄付を求めると言う物です。
このようにして、末端にまで経済と合致したプロテスタントの生活がアメリカ白人保守層の基盤となります。
そこから支流した邪教がQアノンと呼ばれる物で、彼らはトランプがキリスト教を脅かすサタンと戦う救世主だと言う、ジーザス冒涜とさえ取れるような信仰を抱いています。
そのためにトランプ元大統領を権力の座につかせ続け、悪の勢力から自分たちを護ろうというのですが、ここでも聖人と大統領、神の世界の闘争と現世権力の政治と言う物の一体化した世界観が明確に見て取れます。
政教分離という考え方に実に乏しい。
つづく