第一次大戦前後のパラダイム・シフトから書いてきて、白人優位主義、資本主義へのカウンターとしてのアジアでの運動を書いてきまして、その中での境界線としてのロシア、旧ソ連について書いてきました。
昨年末からこの境界においては東西の軋轢が再び激化しており、毎日ニュースでは取り上げられています。
ロシア軍がウクライナ国境沿いに全兵力のおよそ半分を配備するというこの異常な布陣のためにすっかり報道が減っていましたが、これ以前にはポーランドの国境問題が重大なニュースとなっていました。
これは、親ロシア派のベラルーシが難民を旅行ビザで受け入れておいてポーランド側に大量に流すという嫌がらせをしているという問題なのですが、もちろんベラルーシ側は民間の旅行会社が勝手にやっていることだと否定。
しかし、実際にはその旅行会社達というのは政府が運営するペーパーカンパニーだと言われています。
そのようにして大量の難民を送り込まれればさぞEU側は社会状態が悪化、その後数十年に渡って社会経済が悪くなるであろうと言う目算で行われている物だと見なされていて、極めて悪質かつ非人道的な「難民爆弾攻撃」だと非難をされています。
この問題に関しては私の所にもユニセフから募金の要請が来ているのですが、報道によるとポーランド国境は住民以外が立ち入ることが禁止されており、物資を届けるにも現地の人の手を借りないと行えないということを聴きました。
このニュースがあったのは秋のころ合いでしたが、現地では厳しい冬の後、国境の森林地帯では難民の人たちの大量の凍死体が発見されることになるだろうということが懸念されていました。
誰だって自分の住んでいる町内で大量の死体が発見されて欲しいことはありません。
自分のご近所問題で考えれば、こういうことが世界情勢の結果として行われていることの異常性が想像できるのではないでしょうか。
この背景にあるのが、初めに書いた東西の歴史的経緯、および資本主義と白人優位主義のアジア進出とそれに対する反発の力です。
つまりこれ、アヘン戦争や太平天国、幕末の明治維新や第二次大戦からそのまま直結していることです。
この歴史感覚を持つことは、我々が現在の生を体感するにおいて指針となる時空間の認識に繋がる物だと思われます。
こういった感覚から見ると、第二次大戦期に日本柔術がソ連に伝わってサンボとなったこと、またロシア武術が多くアジア武術の影響を受けていることが必然であることが分かると思われます。
このように、洋の東西の身体文化を混交しているのがロシアの身体文化であるということから鑑みると、ロシアのサーカス、バレエ文化がキャリステニクスやアジアの身体文化の裔であることが良くご理解いただけると思われます。
平素、バレエは西洋の身体文化の精髄であると繰り返し書いてきましたが、それはこのような形で昇華しているとも言えるかもしれません。
中世期から近代初期にはフランス国王も自ら愛好して踊ったとも言われるこのバレエですが、その後、ある種の堕落を迎えます。
近代においてはバレリーナは娼婦と同様の存在だと見なされていた、ということが昨今ではよく知られています。
身体を締め付けるコルセット、過剰運動性を招くまでの柔軟運動による開脚、またつま先立ちによる日常的な運動などは、娼婦としての肉体改造であったとみなすと、これは中国における纏足と共通した物であることが分かります。
そしてまた、このようなセックス・ワーカーが顔見世興行を行うということは、日本の花魁文化と実に似通った物があります。
この意味において、近代以降の西洋には、資本主義に伴う性の解放があったことを憶測する次第です。まぁ、フランスはそのままカトリックなのでもしかしたらずっとそうだったのかもしれないのですが。
そして、この文脈で観るなら、ラスプーチンとバレエの関連性を追いかけたくなってくるという次第です。
そちらはまだ確固たるソースが確認できていないのですがともあれ、ここで性と身体文化と武術というつながった価値観がやはり浮かんでまいります。
アヴェンジャーズにロシア出身の、というか元々はソビエト出身のはずの女性スパイのヒーローが居るのですが、彼女は元々旧ソ連の工作員です。
彼女を育てた組織はバレリーナとしてスパイを育てているのですが、そこのバレリーナたちはみな外科手術によって妊娠をしない身体にされています。
ここにもまた、バレリーナが娼婦であったと言う通念が土台として観られます。
この身体開発と性という概念はアジアの土壌において広く伝わっていた価値観だと思うのですが、これはすなわち、インド、中華文化からの影響であろうと思われる次第です。
逆に言うなら、性と武術を切り離したところから、現代文化が始まると言えるように感じています。
そして、そこを切り離している限り、伝統武術の本当のことは決して分からない。