私はディップスというトレーニングが好きで日常的に行っています。
これはインドでヨガの修行をしていた、20くらい年上のダンスのパイセンに教えてもらった物です。
やると胸が攣りそうになるので非常に効いているのだろうと思うのですが、始めた最初はまったく効かせ方が分からず効果が出ませんでした。
単純なトレーニングなのですが、効能を求めるには意外にスキルが必要です。
私の分類では、ディップスは腕立て伏せの系統に序列します。
腕立て伏せもまた実は利かせるのが難しいトレーニングで、子供の頃はペナルティで「腕立て100回!」なんて言われてよくやっていた物ですが、典型的な回数だけを重ねる部活式腕立て伏せで、まったく効果があるものではありませんでした。
現在でも「腕立て伏せチャレンジ」などと言って態々SNSで公開しているものがこの手のヘコヘコ腕立て伏せであったりするのはよくあることです。
まぁこれは、日本の風土的な歴史に支えられたものであるから仕方ないのかもしれません。
しかし、中には「正しい腕立て伏せ」と称して腰が浮いたままで顎だけ地面に近づけるへっぴり腰腕立て伏せをしている人もあって、これがまた混乱と誤解を広めています。
本当の腕立て伏せは、足から頭までが一本化して均等に上下しないと。
出ないと自重が腕に効かせられません。
ディップスでは足を浮かして腕だけで体重を支えることになるので、腕立て伏せの段階でしっかり自重を利かせられていない人はこちらを上手くやることは難しい。
このような腕立て系キャリステニクスの種目の中で、最近のお気に入りはアーチャー・プッシュアップです。
これは段階としてはワンアーム・プッシュアップよりも簡単な物で、両手を付けたスタンスからスタートして身体を沈める時に片腕の方だけに体重を降ろして行って、もう片方の腕は補助としてだけ使うという物です。
私の尊敬するキャリステニクス界の超人、ザ・スーパー・ヒューマンことフランク・メドノワさんもこちらを行っている姿が見られます。
単純に言うならワンアーム・プッシュよりも補助の手がある分簡単なのですが、これにはワンアームではやりずらい独自のポイントがあります。
それは、左右を連続で交互に行うということです。
いや、もちろんワンアームでも左右出し換えて同様にやれば良いだけなのですけれどもね、利かし方がより微調整できるのがこれの良いところです。
私の提唱する形としては、腕よりも大胸筋に負荷をかける、ということです。
これをすることで、胸とは体幹における腕の付け根なのだということが体感できます。
私たちの継承している少林武術では、腕と言うのは前脚だと考えます。
大胸筋はつまり、後ろ脚におけるお尻になります。
大殿筋と言うのは、日常を二足歩行で行う形に進化した人類が、他の動物が持っていない進化を果たした強力な筋肉です。
大胸筋をこの大殿筋として進化させるにはこの方法が非常に有効です。
これをやった後の私の胸筋は、握り拳のように丸くパンプアップしています。
ベンチプレスで172キロを上げていた頃よりも発達している。
そんな大胸筋ですが、カンフーには邪魔だと師父に言われたことがありました。
格闘技では使います。
能動的に使うのではなくて、相手の攻撃を受けるのに必要な肉の鎧です。
でないと胸郭に攻撃が直撃して、すぐに肋骨が折れてしまう。
しかし、日常的に打たれる訓練をするわけではないカンフーではこれは無くていいパーツです。
逞しい身体をした往年の香港武打星(アクション・スター)たちの肉体を見ても、引き締まってはいてもこの部分が大きい人は見当たりません。
筋肉の繋がり方としてはいわゆる力こぶ、上腕二頭筋と繋がるので、内側に詰まる力の働き方をするため、俗にいう蛮力、拙力の類になりやすいので師父の謂われることももっともです。
しかし、ここをお尻として勁を使う場所に換勁できれば、邪魔になることなく活用も出来ます。
メインで使うのではなく、背中側の督脈を通る勁と腕を常げるための頼れる補強として用いることが出来ます。
勁を徹すことが出来る肉の膜のコルセットを纏うことが可能です。
つまり、身体を金の鐘のようにする方法。
初めは後ろ側の督脈の勁を使うのですが、やがて前側の任脈の勁も活用するようになります。
そういう意味でもやはり、これはちょっと上級者向けの練功法だと言えるかもしれません。
なお、健康効果の物として提唱している私の運動法としては、これによってカロリー消費に高い効果があるという処も忘れないようにしたいところです。
先に書いた、人間が特異発達をさせた大殿筋、および下半身の筋肉とならんで、大胸筋は人間の身体の中で最も大きな筋肉です。
食べたカロリーを発散するためにはこれを活発化させておくと有効だとされています。