ドライブ・マイ・カーのアジア史 2・殺すしかない悪 注・ネタバレ
前回はノルウェイの森の背後にある大戦のモチーフについて書きました。 作者自ら、あれは唯一の恋愛小説だと称しているくらいで、そこでは大戦の気配は限りなく抑えられています。 しかし、作中ではすでに直接登場しなくなっている重要な死者の存在が、先のパラダイム・シフトにおける死者として読み取れるように感じています。 言うならば「夏の嵐」のような時代の戦災未亡人物として読むことが出来ます。...
View Articleドライブ・マイ・カーのアジア史 3・会話不可能 注・ネタバレ
さて、映画「ドライブ・マイ・カー」の中に監督が取り込んだという村上春樹的世界観について書いてきましたところで、ようやく今回の映画のお話に入りましょう。 もう一度書きますが、ここからが本格的にネタバレ注意です。 今回の映画では主人公の俳優、家福(カフク)と愛妻の音のセクシュアルなシーンから始まります。...
View Articleドライブ・マイ・カーのアジア史 4・パラダイム・シフト 注・ネタバレ
前回は俳優陣の間で会話が成立しないということまでを書きました。 しかし、彼らの演劇スタイルは家福がやっていたそれぞれが自分の言語で話してプロジェクターで字幕と投影するというスタイルなので、芝居そのものには問題はないわけです。 ここで一度振り返ってみて欲しいのは、この「共同作業」に乗り出しているのが、日本人、中国人、韓国人、フィリピン人であるということです。...
View Articleドライブ・マイ・カーのアジア史 5・玉座の継承 注・ネタバレ
背景を描いたところで家福に視点を向けましょう。 彼は自分の空間、居場所として愛車の中を大切にしています。 彼の車は左ハンドルの外国車です。 家福は、左目に緑内障を発症しており、視界に死角が生じています。 この、自分に見える世界と視神経、認識の話は以前にも扱いましたね。 彼はこの左目の死角に関して、右脳が脳の機能で補ってしまっていたために自分では死角に気付いていない、と医者に診断されています。...
View Articleドライブ・マイ・カーのアジア史 6・異界 注・ネタバレ
前回の記事で書いた座席と継承の話を、また歴史になぞらえてみましょう。 これはつまり、戦後世代である50代の家福が生産力としての中核を退き、その座を後の世代に譲り渡す、ということを意味している物だと思われます。 本来、家福の後を継承する子供が音との間に居ました。 しかし、彼女は四つの時に死亡してしまうのですね。 家福と音が法事をするシーンがあります。...
View Articleドライブ・マイ・カーのアジア史 7・ 注・ネタバレ
異界の死者の場所で鎮魂を行ったドライバーと共に、家福は自分が音を受け止め切れていなかったことを懺悔します。 こうして二人は、世界に通底する混沌の力の働き、また自分には理解できない物を受け入れるということを見つめ返します。 この旅路で演劇の主演をすることを決断した家福は広島に戻るのですが、ここで初めて原爆ドームが画面に大写しとなります。...
View Articleスクラップ&ビルド
老師から教わった気法を五祖拳に取り入れた結果、いままでよりうまく打てなくなりました。 これはね、一回ばらしている段階に入ったということなのでしょう。 気法を抜きにしてやれば、かえってよく打てるということは分かっています。 しかし、そこに拘っていれば成長が出来ないことは明確です。 理解を深めてさらに良い物にしてゆくためんには、これまでに一端まとまった物を解体しないと。...
View Article継承者選び 前編
以前から繰り返し書いているのですが、中国武術では本当のことを師から教えてもらえることは極めて少ないです。 そうやって本当のことを教えてもらえないまま何十年も経つということは、珍しくないどころか当たり前です。 私はそういうことが好きではないので自分は幸いにも得られたことを誰にでも出来るようにまとめて伝授をしていたのですが、やはりこれは上手く行きませんでした。...
View Article継承者選び 後編
前回、アジアの伝統身体哲学の伝承者としての私の生徒さんへの取り組み方について書きました。 今回もその続きです。 自分で生徒さんを募集して人に伝える活動をしていながら、伝統中国武術や気功に関しては誰にでもは教えない、というのもおかしな話のようですが、治療や他の武術に関しては広く門戸を開いています。 あくまで、その上位にある物に関しては門が狭いと解釈していただければ良いかと思われます。...
View Article境界にて 1
この記事を書いている2月22日、朝起きてまず気になっているニュースをチェックしたところ、プーチン大統領によるウクライナ東部と北部に対する独立の認証が調印されたということが分かり、大変に驚きました。 このところウクライナ・ロシア情勢を毎日固唾をのんで見守っていたのですが、ロシアがここまで出てくるとは思いませんでした。...
View Article境界にて 2
ウクライナでは、北部と東部に反政府組織の屯している地域がありました。 これはつまり、タリバーンやISのような軍閥による支配地域という感じだと受け取っています。 アジア北部の歴史においては、このような軍閥による支配は多く見聞してきた事象です。...
View Articleロシアの大衆と市民たち 前編
前回ウクライナ情勢について書いてからだいぶ時間が経ちました。 本日は3月8日です。この記事に着手したのが2月25日で、実際にドロップされるのはさらに半月以上後になるでしょうか。 私がいつも書いているこの場はニュース・サイトではないので、情勢の先進性に関しては常に遅れがちになります。 そのために、先走って不確かな情報を発信しないように気を付けることが可能です。...
View Articleロシアの大衆と市民たち 後編
前の記事に書いた在日八年以上のロシア人ユーチューバーの方は、ロシアの侵攻後、新しい動画を発信しました。 そこでは、恐らくは沢山の視聴者からのクレームや、事務所の要請があったのでしょうね、過去の「ロシアの情報こそが正しい、あなたたちは洗脳されている。戦争なんかする訳ない」という洗脳された当事者による動画への謝罪と訂正が語られていました。...
View Articleプロパガンダと電子戦 2
兵糧攻めと電子攻撃の危機に面しているロシアの状況は、ほとんど壊滅寸前の危機にあるように思います。 GARFAMによる制裁発動については以前から問題になっていたくらいで、ロシアとしても想定はしていたことでしょう。 それなのに、今回の暴挙に出ました。 先に書いたロシア人ユーチューバーではありませんが「理性的に考えて戦争なんか起る訳がない」と我々がどこかで侮っていた通りです。...
View Article凡庸さの自覚
昨年末からのウクライナ、ロシア情勢について知るために、色々な物を観たり聞いたりしてきました。 専門家からの報道も勉強になりましたし、現地人のユーチューバーによる発信なども非常に役立ちました。 そのため、沢山の外国人ユーチューバーの動画を毎日観ています。 情勢の影響は東欧にまで大きく及んでおり特にハンガリーの人たちのお話はとても参考になりました。...
View Articleアーチャーアーチャー・プッシュのこと
私はディップスというトレーニングが好きで日常的に行っています。 これはインドでヨガの修行をしていた、20くらい年上のダンスのパイセンに教えてもらった物です。 やると胸が攣りそうになるので非常に効いているのだろうと思うのですが、始めた最初はまったく効かせ方が分からず効果が出ませんでした。 単純なトレーニングなのですが、効能を求めるには意外にスキルが必要です。...
View Article身体文化から観たウクライナ、ロシアの歴史 1・スラヴ民族
前に、ウクライナ人の友人が「ウクライナ人には日本の侍魂と同じ、コサック魂がある」と不撓不屈の闘士をプレスに表明したと言うことを書きました。 コサックと言うと「坂の上の雲」で描かれる日露戦争での勇猛さが思い起こされます。 旅順での激戦に描かれるコサックについて調べると、彼等はザバイカル・コサック、またはバイカル・コサックと呼ばれていて、バイカル湖の周辺に居た豪傑騎兵隊だったとあります。...
View Article身体文化から観たウクライナ、ロシアの歴史 2・キエフ公国
西洋圏から見下されてきたロシア帝国ですが、その西洋とロシアの折衝地帯にあるのがポーランドとウクライナです。 この両国は、西洋史的には9世紀にはキエフ公国としてヨーロッパの小国であったことを見ることができます。 しかし、13世紀には例の元寇でモンゴル帝国に吸収されました。 ヨーロッパの悪夢に直撃していたのですね。...
View Article身体文化から観たウクライナ、ロシアの歴史 3・白いロシア
砂漠宗教におけるエルサレム問題のように、聖地奪還の意図をもってウクライナはロシアに併呑されました。 1904年の日露戦争の時には、以前書いたようにウクライナのコサックたちはアジア系のコサックたちと共に、旅順での激戦に参加しています。 1917年、ロシア革命のときにウクライナは独立をします。...
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