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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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身体文化から観たウクライナ、ロシアの歴史 2・キエフ公国

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 西洋圏から見下されてきたロシア帝国ですが、その西洋とロシアの折衝地帯にあるのがポーランドとウクライナです。

 この両国は、西洋史的には9世紀にはキエフ公国としてヨーロッパの小国であったことを見ることができます。

 しかし、13世紀には例の元寇でモンゴル帝国に吸収されました。

 ヨーロッパの悪夢に直撃していたのですね。

 繰り返し書いてきた、ウクライナの特徴が繰り返された戦乱と被支配による人種の混交であるというのは、このような複雑な歴史を持っている、ということを意味しています。

 その後、ウクライナは16世紀にはポーランド領となったかと思えば、すぐに17世紀にはロシアに吞み込まれました。

 この紆余曲折をウクライナではなくてロシア側の視点から見てみるとどうなるでしょうか。

 現在のプーチン大統領らが推している史観では、ロシアとウクライナは同じスラヴの家族だ、ということになっています。

 これはウクライナ側からすれば「ウクライナは主権国家なので関係ない、ほっといて欲しい」ということなのですが、ロシア側はしつこく家族性を強調して国境など無いも同じだと言うことを主張しています。

 例の愛国系洗脳女性ロシア人ユーチューバーがまったく同じことを言っていました。

 これはどういうことでしょう。

 憶測されるのは、ロシア史観としてはキエフ公国(キーウ)というヨーロッパの小国を出自とすることで、奴隷民族であったという出自を上書き出来るということです。

 キエフ公国の中世における正式な呼称は、ルーシと言うのだそうです。

 このルーシと言うのがロシアの語源です。

 ルーシ人と言うと、これは現在のウクライナ、ベラルーシ人のこととなります。

 ベラルーシと言うのはかつてわが国では白ロシアと呼ばれていた国のことです。

 ロシア政権がウクライナとベラルーシ(白ロシア)に執着するのは、自分たちが奴隷のスラヴではなく、中世ヨーロッパの公国の出自であるということを確保するためには不可欠である、という遺伝子的な民族アイデンティティの問題だと観ることが出来る次第です。

 ルーシ(キエフ公国)の末裔であると主張が出来れば、奴隷民族とアジア人の混交国家などではなく、ポーランドと同根の西洋人国家だと主張が出来るのです。

 そう見れば、ロシアが難民爆弾でポーランドを攻撃し、次なる侵略の目標だとしていることも納得がゆくところです。

 つまりは彼らは侵略によって同化を切望している。

 何をそんな大昔の、現実的な意味なんてないことのために、と思うのが当然ですが、しかし、我が国でも太古にまでさかのぼって民族の出自を心の支えとしたがるような愛国主義、民族主義と言う物が横行しているではないですか。

 こうして他国が大ごとを引き起こしていることの動機としてみたときに、それがいかにも些末なバカバカしいことであることが感じられることかと思います。

 

                                                                       つづく

 

 

 

 

 


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