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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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シナワリとサヤウ

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 最近、シナワリの動画を撮りました。

 これはフィリピン武術の基本の手の動作で、意味は「編み物をする」であるようで、両手に持った兵器を編み物をするように動かすというのがシナワリと言う練習法です。

 左右の手とそれぞれに持った得物が、互いを縫うように動きます。

 これは基本動作としてあくまで練習として扱われるのが現代エスクリマの常識であると聴きます。

 というのも、現代エスクリマの母体となっているバハド(剣ではなくて棒による決闘)の時代に、両手に棒を持っているよりも片手を空けてそちらは相手を掴んでレスリングをしたり関節技を掛けた方が有利だ、ということがコンセンサスになったためだからだそうです。

 ですので、大真面目に両手で使うのは剣術の技術を中核と想定した伝統エスクリマないしいまだに戦闘時にはそれで参戦しようという実戦エスクリマの考え方になるのですが、うちは古典の家伝剣術、流儀武術であるので両手に刃物スタイルが尊重されていて、シナワリは実戦用法として扱われます。

 シナワリの手法にフットワークを合わせたドス・マノスというテンプレートの練習体系がいくつもあり、それによって両手兵器の攻防技術を練習することになります。

 この、用法を重視するというのが伝統流派の特徴となっているように感じています。

 というのも、流儀武術なので流派ごとにまったく違ったコンセプトや戦術思想があり、戦い方が違うからです。

 それらを学ぶには、サヤウ(舞)と言う戦闘法を体得するためのルーティンや、ポルム(型)が重視されます。

 それらによって手わざのコンビネーションやフットワーク、ポジショニングを学ばないと、単にめちゃくちゃに棒を振り回すだけにしかなりません。

 結果、生徒さん達にはシナワリはするっと初期の頃に通過させてしまってすぐにサヤウに入っていたのですが、考えてみれば私がサヤウを学べることになったのはエスクリマを学んで十年以上経ってからです。

 それまではシナワリや対人練習ばかりしていました。

 その長い期間によって、基礎がしっかり入ったと思うのですが、生徒さんたちはかなりの速度で戦術レベルの段階に入っているので、もしかしたら築基に脆いところがありかねない。

 そこであらためて、シナワリに注目するに至った次第です。

 教材を作っていて改めて思ったのですが、いや、シナワリの段階は面白い。

 難しいことを考えずに、格闘技的なことをやって、武術に必要な小手や感覚が養われるという良い段階です。

 この段階は長く、たっぷりしつこくやってやりすぎるということはないのではないかという気がします。

 サヤウやポルムが無いと使い方は分かるようにならないのですが、そちらはかなり大人向けの渋い内容と言っても良いような気がします。

 もちろん、そうしてサヤウで一人稽古を積んで入神に至るというのがアジア武術としての完成系なのですが、道は決して急がなくても良いですね。

 足りないステップは無いのですから、安心してたっぷりと味わいながらじっくりと道を歩めば良いように思いました。


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