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鶴拳類の視点から見る形意拳 2

 形意拳の五つの字訣とは、採、撲、卷、縮、決です。

 採とは毒草を踏むように歩くことと言われています。

 ちょっと想像しにくいですが、足の置き方の特徴のことを意味しています。

 先生からは、毒の植物の汁を踏み出すようにと習いました。

 採とはよく見ると採取の採です。おそらく、そうやって茎などから足で汁を出すようなことがあったのでしょう。思い切り踏みつければ粉々になって液が飛び散ってしまいます。一つ所に液をコントロールしたいわけです。

 そのようなイメージで、体重を掛けずに前に足を踏み出してゆき、踵から接地して足裏を転がすようにしながらつま先を付けてゆきます。

 これは、後ろ足単重のことであり、鶏腿、鶴の一足立ちを意味していると考えて全く問題ないでしょう。

 次の撲は中国語では捕食を意味しています。殴るという意味ではありません。

 心意六合拳には、鶏撲食や虎撲、熊撲という技がありますが、それらの動物が獲物を取るときのような動作をします。

 前の身法で言うところの虎包頭と同様です。つまり、我々で言うところの飢虎擒羊。技で言うと靠、勁で言うと整勁です。

 卷というのは、巻き込むという意味です。これは防御の仕方とされていて、虎相、猴相の二種類のやり方があります。ネコ科の動物が顔を洗ったり、サルが顔をこするときの動作のような動きですね。どちらも基本は同じで自分の身体を丸くなぞるようにしてのディフェンスをいいます。

 蔡李佛の十字訣ではこれがだいぶ大きくなり、全身を覆うように円を描いて行い、盤字訣と呼んでいます。

 どちらも、決してまっすぐに相手の攻撃を受け止めるということではない。丸く受け流します。

 この延長に、相手の勢を利用した借力という技法があります。

 縮と決はセットです。

 一般の武術の字訣には、この手の物としてよく開合や浮沈という物があります。

 開合、浮沈は分かりやすいです。開いて合わさる。あるいはその逆。また、浮かんで沈むこと。そしてその逆。

 要は、勢いの使い方です。身体を小さく丸めておいて勢いよく開く力を遣うとか、上に重心を浮かしておいて、一気に沈み込むとからを使うとか。

 しかし、把の武術では勢いは遣いません。

 そのものすごく重要なことを表現しているのがこの縮と決です。

 縮とはまたの言い方を束とも言い、身を束ねることと言います。

 これはつまり、全身を統合する整勁のことです。

 単重の軸にすべての勁をつなげて内面を束ねるのです。開合で言うところの合の状態に合わせます。その合を縮と表現しているのです。

 そして決で打ちます。

 決とは決壊のことだと言います。堤防が崩れるように相手を打つのだと伝えられます。

 この時、縮は崩れません。一つに束ねられたまま相手を打つのです。

 私は良く練習中に仲間に打をしますが、打つ前にしっかりと間を取ります。

「溜めないで溜めないで!」と嫌がられますが、溜めます。単重で站と立って勁を一つに集めるのです。

 これを縮と言うのです。そこからスッ、と打ちます。

 形意拳には、独特のテンポがあります。ある先生の書いた本にはターン・タ・タンと言うリズムだと書かれていました。

 ターン、で縮をし、タ、で突然打つのです。そして、タンで次の姿勢に足を踏みかえます。

 試しにいくつか動画などご覧になってみれば、必ずこのヴァイブスが見つかるはずです。

 打その物はなんの溜めもなくスッ、と急速に飛び出ているのに、その前に何もしていないで突っ立っている間があります。その間がターンです。

 このターンの間に内意を集約して勁を統合しているのです。

 もちろん、動きには出さなくていいです。あくまで身体の内側でのお話です。

 また、練功で無いのならそんなにのんびり溜めなくていいです。でも、練功だから字訣を守ってきちんと縮も練習しているのです。

「どうして練習中にすぐ片足立ちになるの?」と訊かれたことがありますが、この縮の癖です。南派の師父たちの動画を見ると、腹のところから足を高く上げて維持をする動きがくせになっている人がかなりいます。

 自分では当たり前になっていて無意識だったのですが、よそから見るとずいぶん変わった物だったようです。

 カンフー映画などで残心の時などに片足立ちになってそのまま両手を動かして見栄を切るような動作をすることがよくありますね。あれもこの縮をモチーフにしたものだと思います。

 と、いったところが最もポピュラーな形意拳の要訣から分析した、把の特徴、ひいては鶴拳類の要点です。

 これらのことを意識して練習すると、同類の武術は功夫が積みやすくなることだと思っております。


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