蔵象学説で教わったのですが、心臓の気のバランスが崩れると心悸という物が起きることがあるそうです。
動悸の悸という字が入っているように、これは胸が苦しくなる症状であるようです。
寝ている時などに、胸の上が重くなる。
断続的に夢なども見て眠りが浅くなったりもするそうです。
そしてこれがさらに悪化してゆくと、腎に症状が出るそうです。
心の気は火行に属し、腎は水行にして陰陽二つを代表する大きな力のある物同士であり、五行相克の関係にありますから、火の暴走によって腎にまで影響を及ぼすというのはこれ、五行相侮と言って火が強すぎて水を圧迫している状態でしょう。
こうなった腎にどのような症状が出るのかと言いますと、その一つに尿もれという物があります。
腎は泌尿器系の臓器であり、尿のコントロールをしているのですが、それが効かなくなって漏らしてしまうことがあるそうなのですね。
夜中に胸苦しくなって尿が漏れるとはこれ、夜尿症ではないですか。
心因性の病ともみなされることがあるので、場合によっては感情面へのアプローチ、カウンセリングなどが役立つこともあるのかもしれません。
我々であれば、心の気への気功や鍼で対応するところなのでしょう。
腎には泌尿器としての側面だけではなく、生殖器系の物だという見方が気功ではされます。
これ、医学では発生学的に元々睾丸などは腎から発生して分離していったということのようで、実際に繋がっているとのことです。
といった次第で、心悸によっては精が漏れてしまうことがあるそうです。
夜中に胸に苦しさを覚えて夢を見て、やがては精が漏れてしまう。
いわゆる夢精となる訳ですが、これ、西洋の伝説にある夢魔の話そのものではないですか。
いわゆるインキュバスやサキュバスと呼ばれる存在ですがこれ、胸の上に座ってくるのでひどく苦しいと言われているところに特徴があるように思います。
別に気持ち良いとかそういう話ではないようなのですね。
この伝承と重ねると、おそらくは東洋医学で言う心悸による漏精が、東欧あたりではこのような夢魔の仕業とされていたんであろうなと思われます。
私がね、中国武術と言うのは格闘技では無くて伝統文化であり、思想であるのでそれによって歴史を学ぶことに醍醐味があると言うのは、こういう見方が出来るということなのですよ。
東洋に伝わる気の角度からの世界の観方により、世界のいろいろなお話の解釈が出来る。
これが身体哲学です。
こういうことがとても面白い。