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エルヴィスと功夫 前編

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 以前に、アメリカ南部における中華系移民の歴史についての記事を書きました。

「南の子供たち」というS・J・ローザンの小説について書いた時のお話です。

 今回はその続きとなりまますので、一度あらましを書いておきますね。

 元々、アメリカにおける中華系移民の大きな動きは、太平天国の乱にありました。

 ゴールド・ラッシュで西部への開拓が進んでいたころに、中国では太平天国が敗北して、落ち延びた革命拳士たちが西海岸に大挙して移民していたのです。

 我々蔡李佛門の開祖である陳享大師も、一説にはこの時にアメリカに渡ってサンフランシスコを晩年の地にしたと言います。

 この太平天国移民の中には、いまだ革命の志を持つ人たちもおり、彼らは西海岸に巨大な地下帝国を作り上げました。

 後に、連邦捜査局が彼らを「チャイニーズ・マフィア」として特定指定団体としています。

 もっとも、この運動のリーダーは後に中国に一時帰国した時に当局に逮捕されてそのまま亡くなっていますので、活動が継続されたのかどうかは不明です。

 末端の革命移民たちは現地で苦力として働き、炭鉱労働の補助や農場での労働、建設途中だった大陸横断列車の線路の設置などに参加していたと言います。

 ブルース・リーが企画に関与した功夫西部劇「燃えよ! カンフー!」はこの時代背景をベースとしており、線路を設置する労働をする人々の姿を見ることが出来ます。

 この鉄道労働者のその後が、上述したローザンの作品には描かれています。

 曰く、アメリカ横断鉄道の線路が開通すると、彼等中華系移民は「黄禍とみなされるようになり」、白人の労働や女性を奪う危険な存在と見なされるようになった、ということです。

 結果、1922年には中国人移民排斥法が連邦議会で可決されて、およそ20年に渡って移民が禁止されるようになりました。

 アメリカ、移民の国なのに。

 ちょっと余談になりますが、アメリカではアイルランド人、イタリア人などの移民が差別されています。

 その中で、大戦期に日系人だけが差別されて収容所に送られたという悲惨な歴史が語られます。

 これはもちろん、黄禍論が背景にあったからだと思われます。

 同じく敵国からの移民であったイタリア系などは収容はされていませんでした。

 ですので、アジア人の中でもなぜ日本人だけが、となりそうなのですが、この背景には、同じ黄色人種の中華系がそもそも移民を禁止されていたというそもそもの法令があったということは、今回見失わないようにしたいところです。

 さてお話を南部に戻しましょう。

 22年以降目に見えて差別をされるようになった中華系の移民たちよりも、さらに差別されていたのが南部における黒人種の人たちです。

 人種分離法が制定され、黒人種は白人種と同じ施設に入れないというルールがあったために、その間に中華系の人々が入り込んで両者をつなぐビジネス上の緩衝材となったということを以前に書きました。

 それでですね、この間、この南部がフィーチャーされた映画を観たんですね。

 それが、「エルヴィス」というプレスリーの伝記映画です。

 これが、物凄く面白かった。

 私たちの年代などは彼のことを、おかしな格好をした太っちょおじさんでゲテモノだと思ってバカにする傾向が強かった。

 80年代のマンガやアニメでは、ダサい人の代表として彼をモチーフにしたキャラクターが登場したりしていました。

 ジャンキーXLなどのミクスチャーで初めて彼の音楽の良さを知ったというのが正直なところです。

 この映画では、さらにその価値観を震撼させてもらえました。

 もう、冒頭でマイクに向かって第一声を唸った段階で、彼がすごいスーパー・スターであることが体中に響き渡ってきました。

 まさに彼の時代を代表する言葉「痺れる!」です。

 画面に映っている女の子たちと同様、私もまたキャーキャーと(心の中で)叫んでいました。

 さてこのエルヴィスと中華系移民がどうつながるのか、それは次回にお話しましょう。

                                                 つづく


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