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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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震える勁の話

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 現在弾腿と並行して教わっているのが、五祖拳の震える用勁の練功法です。

 福建白鶴拳類と言うと、この身体を振るわせる勁法が特徴的だと言う印象されている方も多いかもしれません。

 昔読んだプレスでも、当時日本では非常に珍しいと見られていた台湾の白鶴拳の老師を見つけた「白鶴拳と言えば身体を小刻みに振るわせる方法があったと思いましたが」と質問をしていました。

 老師は気さくに「これのことかな?」とやって見せてくれたという内容であったと記憶しています。

 この時は白鶴震身法として紹介をされて居たのではなかったかな。

 他の白鶴拳の派でも、揺身法、俊身などと呼ばれて同様の震える方法が伝わっています。

 この法は老師が仰るには、中級から高級段階の用勁で、私もこれまでは知識としては教わった物の、真似してやるとお尻を振るだけで変なことになったりするのでやらなくてよい、と言われてきました。

 浮沈、呑吐、気法などの基本から段階を踏んでやってゆかないと身を誤って何も出来ないことになってしまいかねない術なのでしょう。

 えてして偽物武術愛好家がやりがちなのが、そのような段階を踏まずに表層的に高級技法を見よう見まねでパッチワークして何にもなれないまま終わる、ということです。

 ですので伝統武術は、必ず本物の師から正しい段階を踏んで導かれなければなりません。

 白鶴拳から派生した簡化の防身術や日本の空手も、この身を震わせる用勁の段階が見られないことから、その段階を推して知るべしということも出来るのではないでしょうか。

 この身を震わせる用勁というのは、白鶴拳類に限らず多くの中国武術の中に出てきます。

 しかし、多くの愛好家はやはり、先に書いた正しい師から正しい段階を踏んで教わっておらず、見よう見まねで行っているために要諦を得ているという感がありません。

 なんとなくノリでくねくねしてやった気になっている人や瞬発でスナップしているだけの人が多く、やはり老師の表現を借りるなら「お尻フリフリして変なことになっている」と言う状態であるように私には感じられます。

 精密な物を扱う上で、見よう見まねは危険です。

 特に、現代人は指先の神経が発達していることにどうしても引っ張られやすいので、身体の動作を末端の手先から誤読してしまいがちです。

 西洋的な、ハンド、アーム、ネック、ショルダーを主催とした近代人の日常動作として物を見てしまう。

 日常動作は術ではありません。

「発勁はスナップだ」と言うような矮小な誤読を発表していた先生が居ましたが、それこそまさに現代人の典型。

 そういうことではありません。

 寸勁はフリッカー・ジャブだ、とか体重を浴びせているのだ、というような論も同様。

 すべて現代人の身体しか持ち合わせていない人間の観点からの大間違いです。

 真正な中国武術を理解するなら、きちんと肉体の改造から始めてゆかないと。

 身を震わせる勁の運用法もその一つです。

 これは練功法であり、身体を改造することに大きな効果があるものだと現時点での私は解釈しています。

 それがどこかと言うと、これはやはり、一つには白鶴拳類の言葉で言う処の「骨肉分離」。

 身を震わせる練功法は派によって、犬が身を震わせると表現したり、鶏が羽毛を震わせると表現されますが、今回教わっている五祖拳の派では川から上がった馬が水を切るようにと言われます。

 南派武術では、下半身、立ち方のことなどを「馬」と表現します。

 吊歩ではなく吊馬。

 麒麟歩ではなく麒麟馬です。

 この練功をすると、実はその馬にものすごく効果が表れると感じています。

 先に書いた鶏の羽を震わせるの法では、足の裏からふくらはぎが強調されて練られました。

 また鶏なのでこれは片足立ち、すなわち単重です。

 馬の方では足裏から太腿の後ろ側、腰方形筋までが一体化して鍛えられます。

 足に関しては両脚です。

 つまり、川に入って魚を釣る人が履く胴長ど呼ばれる防水着のような状態で勁が繋がって鍛えられます。

 そのゾーン全部がお尻になったような安定感が作られます。

 白鶴拳類と類似性の高いと言われる白眉拳では、胸やお腹を含んで繋げた姿勢を「熊腰」と言いますが、これはやはり腰、お尻の拡張だとも言えるのではないでしょうか。

 しかしこれをなすためにはおそらく、単重では難しい。

 始めに五祖拳を教わって戸惑ったのが、これまで学んできた単重の武術ではないということでした。

 もし既知である単重に拘っていたら、私は何も進捗することが出来なかったでしょう。

 五祖拳は双重で、両脚でしっかり立たなければなりません。

 そうすることで、戦車の駆動部のような強力な土台を確保します。

 これはいわゆる、南派は足場の悪い船の上の武術だから、という言葉と関係しているのかもしれません。

 この練功法を上手くやろうとするには、足裏がしっかりと地面(地の気)と繋がり、それを引き上げて腰の上まで持ってこないとなりません。

 それを手にまでつなげると、三戦の基本形となります。

 半端な繋げ方ではいけません。

 強力な繋げ方が要求されます。

 なんとなくつなげているのと、双重の極みと言えるまでを目指してつなげるのではまったく身の震え方が変わります。

 そして、こうして腰の上までつながれば、お尻だけが分離してフリフリ振られるということにはならないはずです。

 やはり、正しい老師から正しい内容を教わって真摯に向き合わねば、現代人の常識を外れたような体用を得ることは難しい。 


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