今回も、ラジオからのトピックです。
サステイナブルを題材にした番組に登場していた、ジャイカの人のお話なのですが、その方はかつて、ケニアで刑務官をしていたそうです。
配属されていたのは少年たちの矯正施設だったため、そこで収監されているストリート・キッズたちの作業や生活を監視しながら、言葉を教えたりしていたようです。
かの地では日本より多様な理由で路上で暮らす子供たちが多く、人種問題や貧困、紛争などで親のいない暮らしをしなければいけないことが多々あるそうなんですね。
そうなると、日本の家出少年少女とはだいぶスジが違った子たちがそこにはいることになります。
確かに、何も教わらずに生きてきたので本当に獣のような子たちがいるそうなのですが、それは捻じれてしまってそうなったのではなくてただ初めから物を知らないだけなので、教育を与えるとちゃんと学んで育つそうなんですね。
そういった、本人の気質には悪いところのない少年の一人に、デリック君という子が居たそうです。
ある時、彼が落ち込んでいたので話を聴いたところ、悪いことをしていた他の子を注意した時に、逆切れされてしまってうまく説得することができなかったのだということでした。
そこで、自分に自信をつけるために格闘技を教えてくれと頼まれたそうです。話主の方は、心得があったんだそうなんですね。
ただ、一応、刑務所と言うことになっているので、そう簡単に暴力の手段ともなりえる物を与える訳にもいかない。
そこで周りに相談をして許可を取った結果、デリック君に指導をすることが許されたそうです。
こうして、日本人はサムライでみんな武道が出来る、という話が世界中に広まって行く……これは私も責任の一端をになっているのですが。
このようにして関係を含めて行くなかで、彼はデリック君がなぜストリートで暮らすようになったのかを聴くことになりました。
彼がある部族の出身なのですが、そこでは一定の年齢になるとイニシエーションを受けて成人と認められることになります。
その試練に失敗すると、一生村の中で半人前、童貞、人権半額割引で暮らすことになる。
しかし、デリック君はしっかりした少年なので、ちゃんと一人で試練の森に入って、一定期間ちゃんと一人で暮らして無事に部落に戻れたのですね。
けれども、その間に父親が亡くなってしまっていたそうなのです。
母親は、息子がちゃんとまともな人間だと見なされて一生を暮らせるようにと、そのことを彼には伝えないで帰還まで待っていたのですけれども、デリック君はたとえ人間扱いされなくてもいいから、最後にお父さんの傍に居たかったととても傷ついたのだそうです。
それでショックを受けて、部落を飛び出してストリートで暮らすようになってしまったのだそうなのですね。
デリックと言うのもその時に自分で付けた名前で、イニシエーションを経た、部落での本当の名前は封じてしまっていたのだと言います。
世の中には、色々な文化があって、色々な豊かな心を持った優しい人が居て、色々な理由でドロップ・アウトしてゆくものなのだな、と思いました。
世界は広い。
私たちの社会も、その中のたった一つの局面に過ぎない。
そのことを忘れて小さな生き方をすれば、本当のことは何も感じられない一生で終わってしまう。