前回は神話学からみた日本の昔話を紹介しているうちにラーマヤーナに至りましたが、今回は日本のラーマヤーナの正統とも言える桃太郎さんについに触れてみたいと思います。
桃太郎さんの物語における世界のへその先、再誕をする死の世界、闇の子宮は当然鬼ヶ島となります。
そこから桃太郎さんが持ち帰った闇の力は、金銀サンゴと言った財宝、つまり財力ということになりましょう。
しかし、より古いバージョンの物では、この財宝の中には隠れ蓑、隠れ笠、打ち出の小づちなどが含まれており、宝貝の獲得だと観ることができます。
さて、いま古いバージョンというお話をしましたが、現在我々がスタンダードだと思っている桃太郎さんのお話は、戦中に戦意高揚のために改変された物です。
陣羽織、日本一と書かれた日の丸の旗、イヌ、サル、キジが「家来」だという設定は軍隊をモチーフにした演出だと言います。
このお話、なぜ軍国主義のプロパガンダになったのかと憶測すると、そこには鬼ヶ島への侵攻に「動機がない」ことが原因だと観ることができます。
最近のお話だと、鬼が都を脅かしていたから、という要素が加わっているそうなのですが、元のお話ではそういう描写がなかったのだという説があるのだそうなのですね。
ラーマヤーナの方では、羅刹である魔王ラーヴァナが神々の後継者となっていたため、あちこちにその配下の羅刹が我が物顔でのし歩いていた、という前提があるようですが、桃太郎さんの話ではそこまでエピソード0については触れられていません。
だとするとそこには、日本の軍事態勢においては特に正当な理由がなく、他国に攻めこんで財産を奪ってよい、という概念があったということが伺えます。
もちろんプロパガンダなので、そういったように国民を洗脳してしまえば目的達成、という意図が良く見えるように感じます。
明確な根拠も提示されず、判断の是非に国民が関わることも出来ずに、色々と軍事的な決定がされてゆき、国民はただ愚民化政策による洗脳をされてゆくだけ……まるで今日の世相のようではありませんか。
その手の洗脳をしようとする連中は、いまも昔も他国のことを鬼だ悪魔だと喧伝します。
そしてそのような古い手に未だに乗ってしまう自分たち自身を、私たちは常に省みて警戒した方がよさそうです。