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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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ワイスピとうとう完結へ 4 ネタバレ

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 前回では、ワイスピの土台に流れているカトリック的世界観について書いてきました。

 今回のヴィラン、悪魔であるダンテの地獄めぐり一丁目は、ドムのファミリーをだましてローマの法王庁を爆破させるという物です。

 ね、狙いどころがもうもろでしょう?

 経済中枢とかではないんですよ。

 カトリックの総本山なんですよ。

 そこに、彼らを背反させようとするんですよ。いかにも悪魔がすることではないですか。

 そのための手段と言うのは、だまして中性子爆弾を運ばせてそこで爆破させるという物なのですが、ここにまた一つの神話があります。

 結論から言うとこの中性子爆弾、法王庁前で爆発しちゃうんですよ。

 でも、ローマにもバチカンにも死者は0。

 悪企みに気付いたドムが爆弾の威力を減らさせて爆発させたから、ということになっているのですが、これ、中性子爆弾を理解していない。

 中性子爆弾というのは、確かに爆破力は他の核兵器と較べて小さいとされているんですね。

 その代わり、核の汚染性が強いので、人間は余計に死にます。

 なので、相手の土地に打ち込んで人だけ殺して建物は破壊しない爆弾だと言われています。

 無人になった都市機能を侵略者がそのまま使うためにです。深読みすれば、ここにも闘争と融合のギミックがありますね。

 しかし、神話の要素として私が着目したいのはそこではありません。

 アメリカにおける、核爆弾の神話と呼ばれる物の方に目を向けたいのです。

 これは、第二次大戦期にアメリカが日本に二発の核兵器を用いたことで、戦争が早く集結し、全体の死者数が抑えられた、という説のことです。

 この説は、放射能汚染のことを想定していません。

 そのために、アメリカでは多くの放送などで核兵器の本当の恐怖は核汚染だということを一般に言わないとも言います。

 ですので、ハリウッド映画などでは常に、核兵器が爆発しても直接食らわなければノーダメージということになっているのです。

 自国に核ミサイルを落としてしまうゾンビ映画などはこういう背景によって観客に受け止められることが多いそうです。

 もっと深読みすれば、ゾンビの感染汚染は終わったかもしれないけど土地は完全に汚染されたからね、ということなのでしょうに。

 近年、マーベル映画の「インモータルズ」で広島の核爆発に対して神々が膝を突いて泣き崩れるという描写があり、やっとアメリカでも核兵器の意味が理解されたかと驚いたのですが、ワイスピではガッツリ元に戻っています。

 中性子爆弾はなんの汚染もないようで、爆風を浴びたドムにもなんの異常も見られません(一応現状)。

 もしかしたら完結編の後半で何か症状が出るかもしれないですが、このシリーズは前にもサイファーに操られたドムが町中でパルス砲を乱射するというシーンが兵器で描かれていたので、恐らくそこはノーダメージなのでしょう。

 パルス砲は作中でも大量破壊兵器として描かれていて、すべての機器を無力化してしまうために、そんなもの都市部で連発したら大量の入院患者が死亡したり火災が発生したり、地域一帯の飛行機が墜落したりすることでしょう。

 主人公がそういうことをやっちゃうというリアリティ・ラインのシリーズなんですよ。

 さて、その誰も死ななければ爆発力も大してないという中性子爆弾の罠を乗り越えたドミニクたちは、バラバラにはぐれることとなり、ドムは以後、ほぼ一人でダンテに付け回されることとなります。

 この、目の前にノーガードで姿を現したダンテなのですが、映画ファンの間では通称「ギャル」とあだ名されています。

 ジェイソン・モモア、髭もじゃで毛むくじゃらの大男なのですが、今作ではどうもクィアとして表現されているのではないか、と見られています。

 ここで、シャーマン、魔女の両性具有性が浮かび上がってきます。

 ただ、この設定は面白いのに、実際のダンテのキャラクター造形はいただけませんでした。

 バットマン ダーク・ナイトのジョーカーをイメージしたということなのですが、もうそれが大間違い。

 そのてのジョーカーの偽物とかレクター博士の偽物とか、この数十年何万回も観てきました。

 またいつもの薄っぺらな偽物かということで私はげんなりしました。もっとオリジナリティのある造形にすれば面白かったのに。

 そもそも私は子供の頃からバットマンのファンで、近年のジョーカーの過大評価にはげんなりしていて、悪いけどヒース・レジャーのもホアキン・フェニックスのも大したことがないと思っています。

 あいつらも電車の中のジョーカー男もさいたま市議も、上っ面では狂気を装っていますが、結局は利害関係を計算して動いているだけの落ちこぼれの小人に過ぎない。

 そういう取って付けたような狂気にはげんなりで、みんなまとめてジャレッド・レトと同じ引き出しにしまい込んでおきたい。

 今回のダンテは、悪魔だとかジョーカーだとか言いながら、実のところはかつてドムに倒された犯罪組織のボスの息子で、自分が引き継ぐはずだった隠し資産を盗まれた仕返しに来ているだけという、めちゃめちゃ合理的な理由で襲ってきてる奴なんですね。

 まったく狂ってなんかいない。

 かたき討ちと宝さがしって、もろにど真ん中の貴種流離譚の主人公じゃないですか。

 これは非常にもったいない話です。

 とってつけたような狂気の仕草も、まぁ薄っぺらなパーティ用マスクで扮装している程度のペルソナにしか見えませんでした。

 

                                              つづく


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