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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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偏差と生き方 6

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 さて、前回までは、人の心の在り方によって病が起きることがあり、気功はそれを助長することがあるということを書いてきました。

 誤解があってはいけないのですが、もちろんすべての病がそうだと言うことではありません。

 ヘビースモーカーでも長生きする人もいます。すべては当人の閾値との兼ね合いの問題でしょう。

 また、大前提としては自分が書いてきたことは傾向として概ね間違っていないだろうと思っているのですが、疑問も幾分存在します。

 というのは、自己流で正しく行えない気功がまず偏差の元だと言うのですが、ではこれ、自己流でも結果正しければどうなるのだろう、ということです。

 近年、中国で人気を集めている新派の気功流派があります。

 これ、ガンを発した芸術家の方が、自分のインスピレーションのままに創作した物なのですが、この方はこれでガンが完治したと言うのですね。

 もちろん、気功という物が歴代に渡って研究されて来たと言うことは、必ず最初の一人が居ると言うことで、その一人は絶対に自己流なのです。

 それらの自己流の中で、正しかった人の教えが継承されてきた。

 それをまとめてきたから、こうすると大丈夫だけどこうすると偏差を発すると言うデータが蓄積されてきた訳ですよね。

 そういう意味で言うと、本当に天才的な感覚に恵まれた人なら、自己流でも大丈夫な可能性はかなりあるんじゃないかな、という気がします。

 そして、このような中国における環境では、日本と違ってセーフティ・ネットがだいぶ厚かったのではないかという気もします。

 なぜなら、日常的に中医に相談し、漢方薬を服用すると言う環境があるからです。

 もし偏差を起こしても早い段階で見つけることが出来て、日常的に飲む漢方で中和が可能だったろうと思うのです。

 これは文化の厚さによる利点ですね。

 日本の中国武術家が偏差で問題を起こしやすいのは、この部分が欠落しているということがあるように思います。

 普通、中国武術は練習が終わった後の気功や漢方までがセットなんですね。

 でも、そこまでやっているところはまずないでしょう。

 我々も気功はしますが、そんなに常用的に漢方薬が手に入る訳ではありません。

 なので、安全圏からはみ出さない範囲で慎重に練功をするように気を付けています。

 危険な実験は出来ないのです。

 これで言うなら、師父や老師のように、中医学の心得があるマスターの元で修行を積むことの重要性が見えてきます。

 偏差を起こしても、推拿や気功で施術をしてもらえる。

 鍼灸などもだいぶ有効なことでしょう。

 しかし、偏差の危険性はさらに奥が深いかもしれません。

 典型的な統合失調では「電波を受信する」という症状が聴かれます。これを「風の言葉が分かるようになった」と表現した患者さんもいました。

 また、自分を監視している、盗聴されている、集団ストーカーにつけられている、などと言う症状も典型的です。

 これらはみな、感受性の過剰だと言えます。

 つまり、本来なら聴こえない物、見えない物、感じられないことが感じられてしまっているのです。

 気功学的な考え方で言うと、普段我々が感じられている物=自分が感じられる物ではありません。

 肉体(の元神)はもっとずっと多くのことを感知しているのですが、それを自我が認識していない。

 つまり「無意識に感じている」のが常態なのですね。

 これは、感覚神経の麻痺という言葉で表現することもできます。

 臭いなどはすぐに器官が麻痺して感じなくなりますし、もっとも麻痺しにくい痛覚さえ、脳から鎮痛ホルモンが出ると感じなくなります。

 これは、実際には肉体は感じているのですが、それらを統合した結果である自分の人格には届く前に断ち切られているという状態です。

 その統合が失調してしまった患者さんには、身体が感知している物音や気配が感じられてしまって、おかしな妄想に繋がってしまうのではないでしょうか。

 この段階であるなら、恐らくは漢方や鍼灸で神経を鎮静化したりすれば治癒が可能なのではないかなあという気がします。

 深刻なのはその先です。

 気功による能力開発では、新陳代謝によって物理的に肉体を発展させるということが可能です。

 肉体が感じてる部分のフォーカスを高めて自我がそれを感じられるようにするのではなくて、大本の肉体が感じる能力そのものを高めることが可能なのですね。

 ジャック・マイヨールやアイスマンなどの、スポーツの世界記録を出した人の中にはこういう人たちが居ます。

 これらを分かりやすく説明するなら、巨人症と同じ機序だと言えばよいでしょうか。

 崖などから落ちて頭を打つと、間脳に障害が起きてホルモンの分泌に異常が起きることがあります。

 そうすると、成長ホルモンが過剰に分泌されて身体が急成長し、骨が巨大化と肥大をし、短期間のうちに巨人になってしまうということがあるのです。

 新陳代謝が通常とはまったく異なる状態に至っているのですね。

 前者を神経トレーニングによる筋力の強化だとすれば、これは筋量そのもののバルクアップです。

 このレベルで偏差が起きてしまうと、これは中々に治癒が難しいことでしょう。

 巨人症で言えば大きくなった肉体を縮めることが可能なのかということです。

 そしてこれは、まさに白血病や悪性新生物の機序そのものでもあります。

 ですので、東洋医学で対応可能な段階もあるでしょうが、そうでない段階もあるので、気功の偏差にはやはり厳に注意を払った方が良い、というのが現状の私の結論です。

 だから、自分自身の生き方にも注意を払って、常に省みてゆきたいところです。

 時にエゴを止滅させ、足るを知り、中庸を尊んでゆっくりと生きることがやはり望ましい。

 それを無視して気功などとは話にならない。

 かくいう私も、先日冬になって軟組織の状態が変わっているにも関わらず夏場と同じように練功を続けていて、筋肉を断裂しかけました。

 ホント、面白いけど足ることとと引くことを知らないと危険です。


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