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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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大衆文化とサブカルチャー 6

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 先日、いつか横溝とは決着を付けねばならんと思っていた私の前にYOUTUBEで犬神家の一族無料公開の告知が来まして、それを観て感想を書きました。

 今回の映画「ゲゲゲの謎」は、犬神家の一族をフィーチャーした作品です。

 犬神家の時に、現代の拓かれた人たちとはまったくことなる考えを昔の人たちは当たり前にしていて、でもそれはついこの間まで常識としてまかり通っていたことだし、いまでもその時代を過ごした大人たちはそれが刷り込まれているから、そんな価値観に染まらずに若い人はおかしいと思ったらちゃんと声を上げるんだ、とその時に書きました。

 ゲゲゲの謎は、まさにそれなんです。

 さて、ここからネタバレしますからね。嫌な人は退避してください。

 物語の主人公、水木は原作の水木しげる先生同様、血液銀行に勤めてる元復員兵です。

 脚色として、左腕は無くしていませんし独身の設定に変えてあり、外見もあの水木先生ではなくて今どきのイケメンに書き換えられています。

 しかもニヒルで偉くかっこいい。

 のですが、これらも別に単に映えを狙ったのではなくちゃんとお話に繋がっています。

 また、水木は昭和ノワールの主人公的な、ニヒルで出世や権力を獲得しようとしている人物として書かれています。

 今回の映画に明白に欠けているポイントが、ネズミ男の見せ場が無いと言うところなのですが、それは恐らく、長らく定説であった「ネズミ男は水木先生のそういう俗人的な揺れ動く点をモチーフにしている」からであったと思われます。

 欲得ずくで揺れ動くネズミ男的キャラクターを、今回は主人公の水木という主人公が担っています。

 なぜ彼がそんな人間なのかと言うと、これは水木先生の実体験マンガ「総員玉砕せよ」が原案として使われており、戦地で仲間たちが組織のメンツのために無意味に殺され、自分一人が生き残って帰って見ればそのことは無かったことにされてみんなが復興の方だけを見ていると言う環境に適応するためです。

 もう権力や生活苦に支配されないために、他人をだましたり踏みつけたりしても、自分が社会的な力を獲得して這い上がろうとしている。

 そういう、私たちの世代で言うと松田優作的な奴なんですね、この水木は。

 その彼が、自分の立身に利用するための手づるとしていた製薬会社の創設者が亡くなったと言う知らせを聞き、おためごかしに葬式に参列してポイント稼ぎをしようとするところから物語は始まります。

 

                                           つづく


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