さて、最近は筋トレがライフ・スタイルとして一般に広まっており、少し前までのパーソナル・トレーナー・ブームは終わり、多くのニュー・カマーがあちこちにある格安トレーニング・ジムを入り口として増えている一方で、すでに一定レベルより上のヴェテランは解剖学的トレーニングではなく、生化学を重視したトレーニングをしているということを前回は書きました。
この生化学を軸としたトレーニングと言うのは、私が行っているアジアの伝統的な練功法の中で行われて来た物です。
そういった、古い時代の練功法を重視して現代式の商業フィットネスを否定すると言うスタイルは、プリズナー・トレーニングで知られるポール・ウェイド先生がやってきたことです。
まさに彼の掲げたキャッチコピーは「キル・ザ・ジム」でした。
私が現在興味を持っているフィンク・ジュリウス先生のメソッドは、テストステロンの分泌を中心にした生化学的トレーニングなのですが、彼の意見はウェイド先生の意見と非常に重なります。
刑務所を出入りしていた麻薬の売人と、日体大出身のスポーツ・エリートで博士号を持っているジュリウス先生とではだいぶ筋トレの学び方に違いがあるはずなのですが、意見が一致してくるというのは面白いところです。
この二人の意見で特に私が面白いと思ったところの一つは、現在どこででも購入することができるプロテイン・パウダーの否定です。
パウダー状の物だけでなく、それを固めたバーだって同じです。
二人とも口をそろえて「あんな牛乳を精製する過程で出た廃棄物をお金を出して買うなんてばかばかしい」と唱えているのですが、私としては、企業さんがどんな経緯でどんな原価率の商売をしていても、安全で質の高い物が手に入るのならどうでもいいと思うのですが。
しかし、ジュリウス先生はもう一歩踏み込んだ、分泌物の専門家らしいことを教えてくれます。
彼が言うには、プロテイン・パウダーの吸収率は摂取した量の三30%程度だということで、吸収率が悪いのでわざわざ摂取するのは非効率的だとのことです。
成分表を目にすれば、スプーンで15グラムのプロテインを掬って飲めば15グラムのたんぱく質が摂れると思ってしまいます。
一般に、一度に摂取できるタンパク質量は30グラムだと言われていますので、私などは昔それくらいは飲んでいました。
しかし、その場合に実際に身体に作用する量はわずか10グラム。
せっかく抽出されたプロテインを摂っているのに、摂取量の半分も身体につきません。
これは驚きのお話でした。
ちょっとハードコアなトレーニーは、一日に何食も食事を摂ります。
通常の食事を三食、プロテインを三回摂って、計六回の栄養吸収をします。
しかし、実際にはその日に三度のプロテイン接種の内、有効に作用するのは一杯分のたんぱく質だけ。
残り二杯分はシェーカーからどぶに流しているのと同じです。
比較的安いプロテインを1キロ3000円分くらい買ったとして、その内2000円分くらいはどぶに流されています。
こう考えると確かに効率が悪い。
つづく