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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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Jホラー+カンフー映画

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 非常に奇妙な映画を観ました。

 ネタバレを避けるためタイトルは挙げません。うっかり知ってしまうのが嫌な人はここで逃げてください。ヒントはJホラー映画です。

 何しろ怖いし深いなばかりのJホラーなどは私は観ないのですが、すでに界隈がすれてきて作り手がJホラーだと思わせておいて別ジャンルという当たりが眠っているのもこの業界です。

 今回の作品は劇場のポスターで観ただけでは興味が湧かなかった物の、原作が私の好きな作家だと言うことで、あの人なら信頼できると思った作品でした。

 私は深いなだけのホラーは好きではないのですが、ちょっとホラーやファンタジーの要素がある冒険ものやギャグは大好物なのです。

 そして、この作者はというとその手のタイプのギャグで知られた作家です。

 中にはホントに嫌な作品も書いているのですが、どうやら今回はそっちじゃないと踏んで観に行ってみました。

 この原作者ファンという要素は今回大当たりで、登場する俳優さんの顔や演技が非常に原作を思わせます。

 もう、そのことだけで微笑ましい。

 のですが、ホラーパートが始まると不幸の連鎖、本気でこれだけの映画だったらとても楽しい気分にはなれなかったことでしょう。

 しかし、ここからが凄いのです。

 新居に引っ越してきた一家がそこで家族に殺された少女による霊障に遭遇するというある種のお化け屋敷ホラーなのですが、家族のうちのほとんどがとり殺されてしまい、残ったのは主人公の高校生男子と認知症のおばあちゃんだけ、という状態になってしまうのですが、そこで婆ちゃんが「すっかり目が覚めちまったわい」と正気を取り戻したと同時に、彼女が物凄い気風がいい強面の婆さんだったことが判明します。

 この婆ちゃん、元々太極拳の師範でゴリゴリの武術家、それも金庸先生の武侠小説に出てくるタイプのえげつない婆さんで、泣いてる主人公の首根っこを掴んで「めそめそしてるんじゃねぇ! いま自分たちに何が出来るのか考えろ!」と恫喝。

「それは……しっかりと生きてゆくこと……」みたいな生ぬるいことを言うと「バカ言うんじゃねぇ! 復讐じゃあ!!」と激昂して、怨霊に仇討をするべく主人公を鍛え始めるのです。

 その鍛え方というのは「内を良く 外を良く 生き方を濃くする」というもので、物凄く正統派の中国武術の思想なのですよ。この要素は映画オリジナルらしいのですが、実によく研究していると感心しました。

 戦うための手段であると同時に仏教の修業と言う、まさに幽霊と戦うためには最適の物である中国武術「とはなにか」を前面に押し出した物となっています。

 孫の心が霊に脅かされると「イチイチ不安になるな!」と教育するところなど、まさに禅宗の修業そのもの。

 全き生として生きることと繋がって、霊を倒すためには性の力で対抗するのだということになり、放送禁止の性的用語を叫びつつ霊を牽制、また、恋する相手が霊にさらわれたとなると「俺は、〇〇(相手の名前)とやりたいんだー!」と叫びながら救出に飛び込むなど、生きる喜びに対して堂々とした実にタオい姿勢まで描かれています。

 Jホラー+カンフー映画、これは実に凄い作品でした。


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