さて、とうとう、月曜日にケゾン・セルケルで練習していたおじいちゃんが言っていたアルニス・グループの捜索に本日は行ってまいりました。
途中、おそろいの黒いシャツを着た若者たちがアルニスをしているのを発見。
女の子たちもいるしこのグループもいいなあと思ったけど、しかし、たぶん、この感じはあのKAMAOではないかと思われた。
数あるエスクリマの中で、唯一私がやらなくていいやと思ってるスタイルだ。
私がステイしている街にある大学で発展している、スポーツ競技としてのアルニスだ。
なにせ競技には興味がないもので。
そして、おそろいのユニフォームというのも外部の人が入りづらい感じがしたので横目で見ながら公園の奥へと進む。
すると、先日のホリデーにあのおじいちゃんがいた場所に発見、10人ほどのアルニスのグループ。
赤い、中国の道服のような物を着ているのが先生だと思い、胸に手を当てるサリテーションをして彼に挨拶をし、ここで練習をしていると聞いたので伺いました、入れてくださいとお願いする。
練習グループには先日のおじいちゃん(アヤ)も居て、上機嫌で紹介をしてくれた。
俺のBroのハポネスだ、みたいな感じで後押しをしてくれて、無事200ペソで練習に参加が出来るようになった。
他にまだ20代くらいの若先生も居たのだけれど、赤い道服の先生、マスタル・ラピーがマンツーマンでついてくれて、ベルシクを教えてくれた。
これが面白い。
最初に私がセントルイスでアルニスを習ったときには、シナワリからやった。
日本で習った最初もシナワリ。そしてシングル・スティックでは12アングル。
でも、ここではシングルでまずファイブ・アングルを習った。
ホーム・ポジションは左上腕をバストンで囲った包拳礼のようなスタンス。
チョッピング(ウィティック)、アッパー・スプリング(縦回転のウィティック)、サイド・スプリング(右へのウィティック)、ウァーディング(右に持ってゆきながらスピンして地面を打つ)、ロング・レンジ(縦の大きな回転)、プランチャー(アンブレラのような大きな横のラプティック)。
場合によって、最初のチョッピングがサイド・スプリングに代わったりして5カウントになる。
これでおおよその基本の5、6種類が学べるというわけだ。
面白かったのは、すごく姿勢が低いこと。
映画なんかでで割りに見るすっ立ちのエスクリマではなくて、腰を低く落とせと言われて平馬で行う。
そして、常に身体をクローズしてバストン(現地の人はアルニシャーと言っているように聞こえた)で身体を囲っている。右左の構えが明確なのだ。
これは、私が今まで習っていたエスクリマというより、カンフーに近い考え方だ。
この後、16アングルに入る。
ものすごく多いよね、16カウント。
1で横のチョッピング、2でアッパースプリング、3でウァーディングなんだけど、面白いのはこれ、足が我々で言う紐馬。クロスしている。前後が明確だから、打つ角度によっては、足を踏みかえるのではなくて体をツイストするのだ。こんなのはエスクリマでは初めてだ。まさに南派カンフーそのものではないか。
4ではホームポジションに戻るんだけど、ここでのスリングは先端で突くトルソー、5では縦のラプティック、6では右上がりの斜めのルーフで下から打ち上げる。この時の左手を出すのはカンフーの撑掌とまるで同じだなあと感じる。
7ではホームに戻り、8では左前に上馬してウァーディング、9ではそのままの馬で下から股間への打ち上げ。グフみたいなのだね。
10は9で出たところからスピンして戻して、右上腕外にアルニシャーを添える。11で左足を引いて元のスタンスに戻って横に打ちながらホームスタンスに戻り、12では右足を引いてウァーディング、13でまたグフして、14で10と同じ左前の構えに戻って、15でスタンスを戻して左に打ち、16ではそこでロング・レンジという縦の大きな打ち。
右前と、左前で明確に構えが決まっている。
これ、明らかにバストン・テクニックなんだけど、すごく刀術っぽい。
おそらくは右前のアルニシャーをフルに活用しようっていう、バハドのテクニックの匂いがプンプンする。
この後にまた別の12アングルを習ったんだけど、この動線がすごく独特。
右前でまずはそちらに、後ろ足からクロスして進む。その後、今度は前足をクロスして戻ってくる。五輪馬だ。
その後、平馬での背中側に、右足、左足と下がる。これもモロに少林拳じゃないか。
ついで、行ったのを左足、右足と戻ってくる。
それから今度はなんと、左側に身体をねじって紐馬、ついでそれを解いて逆の紐馬をする。
もろに五輪馬での套路なのだ。
こんなんフィリピン武術で見たことない。これ、サヤウに入るのかなあ。
PTKのカスレ先生は初めうちの五輪馬に懐疑的だったから、少なくとも他のエスクリマでの常とう手段というわけではないのだろうと思うよ。
この辺りで、マスタル・ラピーは仕事に戻る、と帰ってしまった。
マスタルは一時間ほど離れた場所にある街の床屋さんだそうで、火曜日が休みなのだという。
weekdaysのレッスンを申し込んだら、特別レッスンを受け入れてくれた。楽しみだ。
マスタルはしきりに、ラピッド、ラピッド、と高速を主張していた。「ラピッド、ラピッド、私の名前じゃないよ(笑)」あ、確か、ラピッド・スタイル・エスクリマってのあったよな。もしかしてそこの関係なのかな?
グランド・マスターはGMペピートって先生だそうだ。
帰り際、マスタル・ラピーはすごく喜んでくれて、一緒に写真を撮ろうと言ってくれたのでみんなで何枚も撮った。ここもすごい友好的な雰囲気だ。
紹介してくれたアヤ爺も得意顔で、このハポネスはワシが呼んだんだよ、BroだBro、とご機嫌。
マスタルが帰った後は若先生のクラスでみんなと合流。
こっちでは、27アングルという物をやる。
これは長い。なんだってこんなに長い物を。
と思っていたら、その後の対練で見えてきた。
若先生が曰く、まずブロックしたら相手のアルニシャーを掴んでバシバシとラピッドで打ちまくれというのだ。
うん、やっぱりバハドの技術っぽい。
若先生が教えてくれたテクニックの多くは「マグニート」と言って磁石のように相手のアルニシャーを自分の体に押し付ける物。そうやって相手が得物を使えないようにしておいてバシバシとラピッドする。
この練習の後はディスアームをやった。
そこでもやっぱりラピッドで、相手の武器を奪ってからもそこで油断せず、ひたすらラピッド。これ、レドンダ・アーニスでお世話になっているロメオ・バラレス先生がいつも言うレドンダ(ラドンデって聞こえるときがある?)と同じことなんだろうな。
この、ケゾン・セルケルのグループについて、ここまでの所見を。
そもそもは日本で刊行された本に、この公園でエスクリマ・ラバニエゴってグループが練習しているって書いてあったことが切っ掛けだった。
おそらく、現在はラバニエゴ先生はここではやっていないのだと思う。
ベルト・ラバニエゴ先生、ご存命なら確かいま、76だ。
このラバニエゴ先生の創始したエスクリマ・ラバニエゴは、コルテを重視していて、他のスタイルには見られない低い姿勢が特徴であり、頭の後ろにアルニシャーを構えるスタイルも独特なのだと言う。
これ、マスタル・ラピーが教えてくれたことと大変共通する。
おそらく、GMペピートというのは、ラバニエゴ先生の後継者なのではなかろうか。次の練習日に質問してみたい。
ラバニエゴ先生が学んだ、ライトニング・サイエンフィック・エスクリマというのは「相手が一回打ってきたら15回打ち返す」というコンセプトの物だったらしい。
あのラピッドラピッドや、27カウントの練習はこのための物だと考えると実に納得が行く。
そしてこの、ライトニング・サイエンフィック・エスクリマは、どうもラプンティ・アーニスってのと関係が深いのかな?
ケゾン・セルケルで練習しているグループの動画を探したら、そこがあって、まさに私が習ったことをやっていました。
もう少し遠くのルネタ公園でも、いくつものグループが練習をしているそうですが、今回の滞在場所からはちょっと遠い。
なので継続してこちらのスタイルの方を調査してゆきます。