我がSMACの、北海道支部を準備中のBROが、面白い動画を見つけてくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=3XTPEairRow
イタリアの、苗刀の先生の動画のようです。
形は日本刀の形で、大きさが異様であることが分かります。
特徴的なのは、使い方が完全に中国刀法であることです。
刀の背中に手や体を添え、兵器を体に纏っています。
また、基礎の体の使い方はやはり中国拳法そのものです。
これが刀術に付随した物であるなら、戚継光が調練した太祖長拳であるのでしょうが、関連動画を見たらこの先生が蟷螂拳を指導する動画もありました。
https://www.youtube.com/watch?v=fRBpD-9-S5E
と、いうことはこれは、山東系の苗刀という、今回お招きしている施先生と同系列の物であることが分かります。
そしてこの動作、エスクリマのマノマノ(徒手の部)にそっくりです。
今回の倭寇武術の研究にのっとるなら、この苗刀術はもともと日本の陰流剣術が、船島の倭寇調練で西洋剣術や中国刀術、東南アジア武術などが混ざってできたものだということができます。
さらにこちらをご覧いただきたいのです。
https://www.youtube.com/watch?v=5UeFxWb3i64
最初のほうに出てくる、刀の峰に左手を当てて体の前を囲う技法は、我々が重視しているヴァーティカル・ブロックと同様の物です。
その後も、ウィング・ブロック、ブランチャー(アンブレラ)と言ったフィリピン武術でおなじみの技法が次々登場します。
刀のサイズが違うだけで、ほとんど我々のラプンティ・アルニスと同じことをしています。
このような使い方は、純粋な日本剣術だけではとても出てこない。
私は以前からフィリピン式と陰流系の剣術は似ていると思っていたのですが、両者の相違点がここではすっかり埋められています。
https://www.youtube.com/watch?v=8lbgO4kwNvI
こちらの動画では、中国拳法でいう撑掌を使った技法を行っています。
これ、フィリピン武術でいうタピです。
ヴァーティカル・ブロックで止めておいてからタピでそらして反撃するというアルニスの定石が完全に行われています。
日本剣術、西洋剣術、中国刀法、東南アジア武術が一体となった姿があります。
これはすごいものだと思います。
その後の日本内地の武術では忘れられていった物のようですが、歴史上において人類は海上でのこのような闘争術を開発していたのです。
現代剣道やフェンシングでは学び得ない重大な遺産だと思います。
以前、私たちの蔡李佛拳を初めてみた友人の拳士が「蟷螂拳に似ている」と言ったことがありました。
その時は同じ少林の流れだからかなと思っていただけでしたが、その中心は海上にあったものだといまは思います。
このような技術を使っていた倭寇たちは(倭寇の戦法を模した物がこの山東苗刀であり、大倭寇後は解散した兵士が今度は海賊になったりする)、この後、洪門のような結社を中心に東南アジア各地に華僑のルートを作ってゆきます。
そのようにしてこの海域武術はその後も現代にいたるまで継承され続けてきたわけです。
ラプンティ・アルニスもその流れの中の一部であることは間違いありません。
個人的な話をしますと、私は日本人であり、日本古武術の継承者であったにも関わらず、それらを捨てて外国の武術の継承者として生きることになったことにいくらかの逡巡が常にありました。
しかしそれは、私がコスモポリタンを志向する物として、どうしてもしなければいけない選択だったように思っていました。
ですが、それらを追求し続けた結果、思いもよらない形ですべてが一つに融合しました。
中世のコスモポリタンとも言える海上生活者の文化によって、西洋、中東、中華、日本、東南アジアは自由海域というコスモポリスを形成していたのです。
私にとっては、その象徴がこれらの東シナ海の武術です
選んだ道を歩き続けてこのような真実に行き当れたことは、望外の喜びであると感じるとともに、これらの武術を通してより多くの皆さんにも同様の体験をしていただきたいと思う次第です。
当然なのですが、我々現代人は今現在の歴史の最先端に立つ存在です。
その喜びと大きさを、本当の歴史を体で感じることで知っていただきたいと思います。
伝統と文化にこだわり続けてきた私たちの活動の真価が、今回の企画で大きな形を結ぶこととなりました。
現状、この両者を同時に経験できる機会は世界中にほとんどないと思います(フィリピン以外にラプンティ・アルニスができるところがヨーロッパとうちしかない)。
中国武術、日本武術、西洋剣術、東南アジア武術、歴史研究、などを愛好する多くの人にぜひこの貴重な真理への接触をしていただけたらと思っています。