練習の時に、身体のあちこちを触ってもらって勁の動きを知ってもらいます。
経絡図や発勁などで勁の流れを知るだけでなく、身体の中でどう動いているかを知っていただくとそれを模倣して体得がしやすいのです。
この間、新しく来られた方ともそれらの練習をしていたのですが、胸はどうなるのかという質問に対して触ってもらい、勁を動かすとひどく驚かれました。
へっこませているのかと訊かれたので、そのつもりはなくてただ広げたのだと答えました。
人間の胴体は楕円状なので、一部を伸ばすと結果そこがへこむことになるのだろうと思ったのです。
胸がへこむと言えば含胸という物が中国武術では語られますが、これは決してボディビルダーがポーズをとるようにして作ってはいけないとよく言われた物です。
体を真っ直ぐにすると、結果それが出来ます。決してクラウチングするように猫背になって作ってはいけない。
そんなことを説明したのですが、本日試みに自分の胸の中央を触って勁を広げたところ、胸骨が大きくへこんだので驚きました。
壇中穴の部分の骨が内側に吸い込まれるように動きます。関節を使わない、勁による含胸が出来ていたのです。
これは、日々の気功の賜物でしょう。
気功をよく行って内勁を使うようにしていると、知らない内に骨肉分離が進むようです。
関節の運動に関係ない発勁が出来るのも、そのためです。
特にこの壇中は大きい穴所であるために、よく練功をされる場所です。
中国気功になる前の、インドのヨガではチャクラという概念があり、その中の一つであると言います。
私はシナ海の武術の研究ばかりが専門ですが、このあたりはうちの師父が専門家で、よくこのようなことを教えてくれました。
人にはそれぞれ、強いチャクラがあり、私はこの胸の中丹田の部分にあるものがそれに当たるそうです。
このチャクラは愛情をつかさどっており、そのために私は愛着が強い気質があるので、それを捨てるために日々修身に気を付けています。
このようにして、人間が本来持っていた力を取り戻してゆきながら、きちんと理性による自己の制御を並行して学ぶことは欠かせません。
気の流れは身体の状態のみならず、心の状態にもつながっています。
チャクラと言われる大きな穴所を開発しつつ、治めることを知らなければ、人間性はただ体内の力に振り回されるだけの物になってしまいます。
正中線にあるチャクラの働きは、それぞれ精神に大きな影響を与えるそうです。
これらを開発してゆけば、するほどに影響は大きくなります。
額にある印堂穴も動かせるのですが、胸と同様このような骨の部分まで動くほどに使ってゆくということは、すべてのチャクラが強く働いていることと思われます。
もしそれぞれに振り回されてしまっては、情緒障害のようになってしまうことでしょう。
それではなんの向上も自由もあり得ない。
肉体の健全さと精神の健全さを得てゆくことが最大の目的であることを決して見失ってはいけません。