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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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内側の圧

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 最近、ベンチプレスのウェイトが151に挙がりました。

 以前に、西洋式の腕立て伏せではなく中国武術の練功法としての腕立て伏せ的な運動(鉄牛耕地ETC)を内家拳法の拳士にお伝えしたところ普通の腕立て伏せは一回も出来ないのにすいすいできたし「上腕が疲れない」と不思議そうにしていたということがありましたが、ベンチプレスも同じ要領で出来ます。

 なので、上腕の負担は少なく、内側の勁で挙げられる。

 ベルトもグローブも使わないし、ブリッジもしません。

 この勁で行うやり方ではどこの何の力を使ってることになるのだろうと不思議に思う部分があったのですが、今回記録が伸びたことで負荷がかかっている場所が少し自覚できました。

 一つは丹田です。

 三丹田の一つ、中丹田である神道穴に負担がかかります。やりすぎるとここが詰まったように感じる。

 そしてもう一つは恐らく、身体の内側の圧なのではないかという感じがあります。

 伝統的な理論としては、身体の内側を経絡という仮想の線が走っており、そこを様々な力(力のことを気と呼ぶ)が通っているというのが人体観として教わることですが、この考え方を噛み砕けば我々の勁とは体内の圧と言い換えられるのかもしれないと思っているところです。

 この発想のヒントは、いつもお世話のになっている茅ケ崎クラスのスタジオのオーナーにいただきました。

 この方は草創期のエクストリーム・スポーツのチャンピオンだった人でダンスのインストラクター、身体操作のプロフェッショナルです。

 この方がいつも勁の練習をするときに「内側から表面張力が溢れるみたいに」と自分にお呪いを唱えながらやっているのです。

 私自身は経絡理論の概念が入ってしまっているのでその視点がありませんでしたが、確かに体中を網の目状に走っている経絡に勁が通ることで膨張が出るなら、体内の圧が外に膨らむようになる、と解釈しても間違いではないでしょう。

 それどころかこちらの方が分かりやすいかもしれない。

 いくつかの拳法の本には、身体のいろいろな場所を風船が膨らむように使うのだ、と書いてあったのを昔に見たことがあったようにも思います。

 また、私が教わったことでは「勁力の圧の詰まった鉄球になる」という物があります。

 内側に圧を高めれば表面は張って膨れ上がります。

 また、ガマ功の言葉にあるガマも同じように膨らみます。

 もちろん、ただやみくもに身体を膨らませれば勁が遣えるということではなく、あくまで一定の方法で特定の場所に圧が加わって結果として幾分膨らむような感じがある、ということです。

 なので、以前に居た不真面目な会員のように筋肉を縮めて固めることでパンプアップさせても無意味です。

 一説によると、我々の開祖の陳亨先生は金鐘罩の継承者だったとも言います。

 これはある種の排打功なのですが、少林七十二芸の最高峰だという話もあります。

 そう考えてみると、他の芸の多くがここに含まれている物の断片であるようにも見えてきますし、それらを一言で云うなら内側の圧の操作であるようにも思えます。

 このような打撃への抵抗力を作る練功を排打功と言いますが、実は排打功とは身体の内側での発勁のことで、内面からの圧で外からの圧を撃ち返しているのです。

 我々の発勁がここからやってきた可能性はかなりの確率であり得るのではないかと思っています。

 ベンチプレスに視点を戻しますとこれもまた同様で、私のやり方は151キロを持ち上げるというより、その重さに潰されるのに耐えてそれを内側の圧で跳ね返すという表現が適切であるように思います。

 気功のルーツであるヨガを使ってこのような耐性を身に着けた人が、ジャック・マイヨールです。

 彼は通常では考えられなかった深さにまで潜水し、その水圧に耐えました。これもまた内側からの圧の調節を行っていたのではないかと考えられます。

 同じように、発勁はまさに相手との衝突のエネルギーを一旦中に飲み込んでそれを跳ね返しているとも表現ができます。

 この飲み込む段階の時間のラグを短くするのが整勁の正確さなのでしょうが、実際にどこまでこの瞬時の衝撃の吸収とリリースが縮まるのかは分かりません。

 自分が撃たれた時などはワンテンポ置いてから中に衝撃が来ることが多かったように記憶をしています。

 この吸収やラグなどから考えると、勁を通しているときは細胞や細胞がつながって作られた膜が膨張してある種の硬質なゴムボールのような状態になっているのではないかという想像ができます。

 体が健康になるのもこのゴム状の膜が厚く柔らかく育っているためではないでしょうか。

 ベンチプレスの後は首や肩周りに凝るところが出るのですが、そこを点穴して気功で治していると、その凝り固まった膜がどんどん柔らかくほぐれて指を飲み込んでゆきます。

 気功療法の臨床例から言うと、脳や神経に病のある人は身体の膜が極端に固いか柔らかいかのどちらかだそうです。

 これを適切な弾力の健全な強さに保つことは、心身の健康につながっていることも想像できる次第です。

 拳法のみならず気功のミソは体内の圧の調節にあるのかもしれない。


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