本日、うちに練習に来てくれている友達がクンタオの動画を紹介しているのを見ました。
そこで行われていることが、あまりにも我々の物と同系の動きであるので、非常に関心いたしました。
クンタオは拳道と書く福建の武術で、インドネシアに移住した華僑の間に伝わっていた中国武術なのですが、近年になって中華系以外の人々にも入門が許されるようになったと言います。
私はもともと、南派武術の南進の様子を探るために、これを求めてフィリピンに行ったのです。
結果、まったく知らなかった大当たりの奇跡のラプンティ・アルニスを持ち帰ることになりました。
フィリピンではクンタオの形跡をまったくと言っていいほど見つけられなかったのですが、あるとは言うのですよね。
私がこれに強く興味を持ったのは福建武術であると同時に、シラットとしてインドネシアの武術とみなされており、かつ、フィリピンの部族の物だともされているという情報を耳にしていたからなのです。
特に最後の情報は希少なもので、フィリピンの武術を研究してあちこちさまよっている過程で、ユーラシア博物館のフィリピン展で知りました。
私が行った日にはやっていなかったのですが、どこかの大学の研究グループが展示期間中にパフォーマンスをしていたというのです。
五祖拳という南派拳法であり、またフィリピン武術でもありインドネシアのシラットでもあるというこの存在は、アジアの中国武術史において外すことが出来ないのではないかと思いました。
ちなみに、それがどんなものかと言いますと、どうやらこんな感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=9WAJlG1Tvng
なんという。
いつも私たちの練習会に来てくれている皆さんなら覚えのある動作ばかりです。
反清複明の符牒があり、また心意把の痕跡もあり、套路を読めるなら次々に訴えてくる物を受け止めることになります。
その中に、すごく文化的な、民族舞踊のような物が入っているところに、混交の姿を見ることとなりました。
以前に私の師父が香港で行われた蔡李佛拳の世界大会に、日本鴻勝館主席として参加した時の動画を見せてもらったのですが、そこに現われたインドネシアの蔡李佛拳士たちは虎縞の民族衣装に身を包んでおり、また拳風も独特の力強さがあって非常に格好の良い物で市が。
このように、民族を越えて伝わった武術にも、それぞれの民族のヴァイブスが入ってくることがあるのかもしれません。
クンタオの伝播は、民族を越えて一つの物が広がっていったという歴史の躍動をそのまま映した物のように思います。
動画で観ても、クンタオすげーいいなーと思って、誰かうちの仲間が行って継いでこないかなあと思えてしかたがないものです。
そのようなことを思いながらし今回なんとなくサーチしてみたところ、このクンタオ、フィリピンではもっともインドネシアに近いミンダナオに伝承されていることが分かりました。
どうやらタウスグ族と言う人々に舞踊として伝わっているそうです。
また、それには剣を使った踊りも伝わっており、それのことをスィラットと呼ぶそうで。
おぉう……。
私の学問への愛好心がうずきます。
いつか私たちのグループが持っている民族武術の伝統と教えが、どこかでそれらを学んでいる人たちと繋がり、新たな真実の姿が見えてくる日がきたらと思うと非常にワクワクする。
私自身は、かつて日本人らしい日本人の姿を求めてきたのですが、結局そのような日本人にはなれず、世界の上の21世紀人の一人であることを選びました。
日本武術のいくつかの資格を放棄し、外国武術を二つ継承したのもその表れです。
自分で思っていたのとはまったく違う道を歩むことになりましたが、こうして世界を生きるのは自分には向いているような気がします。
日本のために働くことはだいぶできなくなってしまいましたが、広く薄くではあっても、多くの人々の間をつないで正統な伝統と歴史を繋いでゆき、そして次の心ある人に手渡すことが役割なのでしょう。
そしたらその誰か、クンタオ継いでこないかなー。