先日、また師父とお会いして稽古をしました。
稽古と言っても、いまの私は膝が動かずほとんど動けません。
無理のない範囲でほんの数回だけ動きをお見せしたあとは、ベンチに座ってお話をするばかりです。
これが私たちにとっては非常に重要なことです。
夜の公園に腰かけて、世界情勢や社会の動き、人心の流れや人類史について話します。
そこで、思想的な問答をすることこそが師父としての大事な修練であったりします。
伝統を保持しながら現代を生きることが我々の使命であるからです。
ひとしきり、最近生徒さんに話したことや出来ればみんなに伝えたいようなことを話していると、不意に師父がいいました。
「あなたが居なくなるとつまらないですよ」
まるで私が能動的に死を選択したみたいな言い方です。
「そう、死ぬっていうのは、つまらないことなんですよ」
と私は答えました。
そのことは、医師に死の可能性を告げられてから、何度も考えたことです。
「死ぬなんてつまらない」というセリフが隆慶一郎先生の小説に出てきますが、この言葉が何度も頭に訪れました。
思うさま生きていれば、死は大騒ぎするようなことではありません。
悲しみも痛みも無い。
ただ、つまらないのです。
終わると言うこと、消えるということはそういうことでしょう。
現在、日本は異常な猛暑に襲われていて、人によっては気温によって血栓が出来てしまうそうです。
その場合、最大死亡率は三割程度だそうで。
私の場合は、スタートが2割2分。そこからこの追い打ちです。
一体何がどうなるのか、それは誰にも分からない。
でも、そのようなことに思いをやることなく、ただいまこの時を心地よく過ごすということが私たちが学んできた伝統武術の思想です。
本日は少し曇りがちで、気温が低めでした。
おかげで外の気温に存分に協調することが出来ました。
夏の日というのは、非常に気持ちの良いものです。
涼風が足元の草花を揺らして、ずっと向こうまで走ってゆきました。
世界は広い。
空は青い。
私たちは武術と気功を通して、自然そのものと繋がって生きていられる。
このことを伝え続けることが私の命の在り方なのでしょう。
それはとてもうれしい命の在り方です。