蔡李佛の基本技、二つ目は掛槌です。グァチョイと読みます。
このグアチョイはいわゆる裏拳打ちで、横方向にも縦方向にも拳の背中側を打ち付けてゆきますが、一般には上から下へが基本動作として練習されます。
帽子や服を脱いで得物掛けに掛けるような動作です。
面白いのは、北派の劈掛拳などでは下から上に打つ動作が掛と呼ばれているのに対して反対だということです。
両腕を鉄線功でつなぐと、前手の掛が12コンビネーションの1に当たります。そのままの動きで次の逆手に勁力がつながるのですが、この場合の掛槌は必ずしも裏拳による急所への打撃である必要はありません。
「蔡李佛に攻防の動作の区別は無い」という言葉がありますが、相手の攻撃への防御としてでも、相手を抑えつけるような動きとしてでも、また相手の手足や顔を払いのけるような動きとしてでも、この掛は多用されます。
極端な話、多人数の乱戦においては、振り回して当たればいい、という発想があります。たまたまそこに相手の顔があればいい。打ってきた攻撃があればそれで受け止めたり払いのければいい、変な距離でかき分けるだけになったら、そのまま次の攻撃につながる径路を開けばよい。なんなら何にも当たらなくても背後を取られないための牽制として十分。
大人数の敵の中を切り開いてゆくための第一歩、それがこの掛槌です。