アメリカ・フィットネス界のポール・ウェイドが公示したトレーニング法、キャリステニクスは古代から伝わる自重トレーニング法のことだそうです。
ウェイド氏の本を読むと、それらが古代ギリシャの武術や東洋の武術、ヨガなどの中に伝わってきた物の総称であるということがうかがえます。
典型的なキャリステニクス・トレーニング法としてヒンズー・スクワットが思い出されますが、これこそまさにヒンズーと言う言葉からヨガを彷彿させます。
昔、師父が世界を旅していた修行時代、インドでは井戸を掘る仕事をしていたそうです。
仕事が終わると、近くの村から一人の老人がやってきて、一人一人の手を握って感謝を伝えてくれたそうなのですが、その老人が実にマッチョ。
後に、近所でカラリパヤットというインド武術の先生が居ると聞いたのですが、その先生こそ毎日やってくる老人でした。
カラリパヤットというのは、ヨガのもう一つの側面とも言われている武術です。
本来のヨガとは、行と武術の側面があって、両方あって一つだったと言われているのです。
しかし、現在のヨガにおいてこの武術がスポイルされているのには明確な理由が語られています。
セポイの乱です。
中学生の授業で習いましたね。インドを植民地化してきたイギリスに対して、セポイと呼ばれる戦士たちが反乱を起こした事件です。
このセポイ達というのが、ヨガとカラリパヤットで訓練を積んだ兵士でした。
反乱の鎮圧後、イギリスは禁武政策を敷いてカラリパヤットを取り締まり、これを行う人々を弾圧しました。
結果、この武術は衰退し、一部の部族や宗派内での秘密の訓練のみによって継承されるようになったということだそうです。
とはいえそれからもう百年。現在ではまた復興がなされてきているということで、テレビやお祭りなどでも見ることができます。
また、このカラリパヤットが中国に伝わったことから中国武術が始まったと言う説もあり、少なくとも長拳などには間違いなくその痕跡が見られると言われています。
私の研究では、仏教とともに伝来した少林武術のルーツも間違いなくこの武術になります。
同じヨガの流れであるルーシーダットンを当たってみると、確かにカンフーと気功の原型が見られます。
片足で立つことを多用するキャリステニクスの要素は、少林武術では根幹の第一歩となるという心意把と同じです。
ただ足を挙げておろす。それがなぜ少林拳の極意なのかという答えが、ルーシーダットンを学ぶと明確に見つけられます。
そして、それがヨガであり、カラリパヤットから来ているのであろうということも。
師父が出会い、のちに目標とすることになったカラリパヤットの老師が、なぜムキムキだったのかということに関しては、ポール・ウェイド氏の本に書いてあります。
それは、特定の方法で自重トレーニングをすることで、本能の部分で筋肉の発達を促す能力が目覚めるからだ、ということです。
この考え方はただの雑な根性論にも聞こえますが、実際気功ではまったく同じことを言います。
本能の中の動物の時代の部分を目覚めさせて、それによって自分を発達させるのです。
本来の中国武術とは、ただ攻防の手管を練習する格闘技ではありません。そうやって心身を改造してゆく練功法にこそ実があります。
適切な内功をすることによって、自重だけでも身体が大きく成長する。
ただやみくもにトレーニングをしているのとは違うのです。
中国武術では、基礎の段階でただ立つだけのトレーニングをしたりもしますが、それもまた上手くやればかなり筋肉を作り変えることになります。
ウェイト・トレーニングは効率的で短い時間で大きな効果が出せるので私も行っているのですが、それだけでは中国武術の身体にはなれません。
使える内側の力の伴った肉体を作るには、独自のキャリステニクスを行わないとならない。
カンフーの動画などでも、足を下ろして立ったり頭だけで倒立をしたりと、色々な自重トレーニングをしているのを見たことがある人もいるかもしれません。強者の中には指で倒立する人もいます。
また、昔雑誌の付録についていたジャッキー・チェンのトレーニング法という物は、椅子だけを使ったキャリステニクスでした。
そういった訓練を行って身体の内側に刺激を与えること成長ホルモンの分泌も促し、菜食主義者でも身体が作られるというのがこういった伝統的な訓練法の構造なのでしょう。
気功による肉体の製造方法に加えて、ルーシーダットンでも身体の作り方を学んだいま、こちらの可能性の追求に関心があります。
ちなみにこちらが、菜食主義者のキャリステニクス実践者の方です。
https://www.youtube.com/watch?v=7NiIlibbFqk