また、痛ましい事件が起きてしまいました。
無差別に多くの人を傷つけて挙句自殺というこの手の件に関して「死ぬなら一人で勝手に死ね」という声が必ず上がります。
私も、なぜそのような無意味なことを、という気持ちしかありません。
ですが、実際にはこの手のことは類型的と言っても良いくらいに繰り返され続けています。
各地で起きるホームタウン・テロリストというのもおそらくは同じ手合いの人々でしょうし、また身の回りを見渡せば、他人を巻き込んで自爆する性癖の人は必ずいるのではないでしょうか。
このような人を、私は常々問題として取り上げてきました。
自分の分の支払いを一人で背負おうとせず、何かあればすぐに他人に支払いを押し付けようとするという人間性の人々。
これは決して珍しくないのでは?
そして珍しくないということは、問題ではないということではありません。
珍しくないからこそ、深刻な社会問題だと言えるのではないでしょうか。
人が他人を巻き添えに自爆をしようとする意識の根源には、自分と他人の区別がついていないという幼児性があるのではないでしょうか。
他人は他人、自分は自分、他人のことは自分には関係がない。そういうことが分かっていない人は、果てしなく多いように思います。
SNSでのマウンティングの取り合いが盛んであるという話などを聴くと、ほんとかよ、と思いながらもどうしようもなく情けない気持ちになります。
例えば町のカフェやファースト・フードに行くと、おばあちゃんがひたすらに近所のうわさ話や他人の悪口を言いながら、お互いに相手より優位に立ちあおうとしていたりという粘着して絡み合ったようなセッションをしていることを目にすることは非常に多いです。
そこまで長生きしててそれなのかよ。と、とても虚しい気持ちになります。
自分自身の体験した世界のこととか、自分が素晴らしいと思うことについて話すのではなく、ひたすら身近な他人の足を引っ張る話。
お前、それがお前の住んでる世界なのかよ。と空恐ろしく感じすらします。
よぼよぼになるまで長生きしてきて自分の内面がそれだなんて。
あるいは、もう身体が利かなくなってきているからそうなのかもしれないと言う風にも考えられるのですが、残念ながらそうではないようです。
先日、ネットでたまたま(ほんとにどうしてだか思い出せないのですが)目にした、いわゆる「面白動画」の類が壮絶な物でした。
地下アイドルだかなんだかをしている女の子が配信している動画だったようなのですが、まぁ平たく言うと内容は、ファンからの書き込みで胸のサイズについて指摘されたその子が怒りだしたところ、方言が大変に強かったのでかわいらしかった、という他愛のない物なのですが、そこで言っていることが私には大変衝撃的でした。
「お前ら人のおっぱいちっちゃいちっちゃい言うけど、この中に一度でもおっぺ触ったことあることあるヤツいるのんか。金出してじゃねぇぞ。一度でも彼女出来たことあるヤツいるんかや」みたいなことを言っていたのですが、本当に途方にくれまして、いまでもその衝撃から立ちなおり切れていません。
私のオンタイムの皮膚感覚では、セックスと言うのは高校生くらいでするのが当たり前だった。
たまたま機会がなくても10代のうちには特になんということをしなくても自然に20代の頭にはしている物だろうと思っていました。
それは、ご飯を食べたり眠ったりするのと同じくらい当たり前で、疑ったりするようなことではなかった。
私の周りというと、十代で職人になって車買ったりするようなのが普通だったから、違うライフスタイルの人たちもそれはいるのでしょうし、もちろん食事に興味がない人間がいるようにセックスに興味がない人間がいるのも納得が出来ます。
でも、興味があるのにしない人間というのが存在するという前提でこのアイドルの子は話していた訳で、そんなことが存在する世の中になっているというのは本当に驚きでした。
私にとっては彼女の言葉は「お前ら人の作った料理マズそうマズそうって言うけど、お前らの中に一度でもご飯食べたことあるヤツいるのか」と言ってるとの同じような物でした
だって、三大欲求だよ?
あらゆる生命の根本のことですよ?
どれだけこの社会は、自然なあるがままの世界のありようからかけ離れてしまったのだろうと打ちのめされました。
そしてそのような命の営みから離れた人間が、心身を健康に過ごせようとは想像できない。
私自身、古武術時代は「殺し合いの後は女を買え。じゃないと心が戻ってこれなくなる」と教えられてきた物の、ボディガードの仕事でギリギリの想いをしても「心の通わないセックスは好きじゃない」と意地を張っていた結果、やはり自律神経がおかしくなったりしてきました。
だから、自分の考えでセックスをしない人間のことは理解が出来ますし、その結果心身に歪みが生じることも身体で思い知らされています。
しかし、この場合はそれとはまったく違う。
あまりにもセックスを現実離れした物としてみなしすぎている!
確かにセックスはこの世界においても格別に素晴らしいものだ。
しかし、どれだけ貧しくても、戦乱の時代でも、被差別階級だとしても、人類はセックスをし続けてここまでやってきた。人間とセックスの距離がこんなにも離れた価値観を持つのはあまりにもいびつだと言わざるを得ない!
この発言をした彼女も、彼女にそのように見なされた人々も、あまりにも惨めだ。
恐ろしく極端にゆがんだ価値観のごくごく狭い世界に住んでいて、おそらくはそのことに気づいてもいない。
ほとんど、現実世界に存在しているとは思えないほどに人類史とかけ離れた世界観に存在している。
そのような考え方に染まってしまったのは、おそらくこの現代社会の病弊に由来するのではなかろうか。
この社会は競争だ。スポーツでゲームだと、あまりにも多くの大人が言いすぎている。
そのような中で育って、果たしてどれだけの子供たちがそれを真に受けずに、自分の価値観を確立して成長することができるだろう。
真に受けた人間は仕事や生活が他人との競争だとなんの疑いもなく思い込んでいて、常にコソコソ他人をうかがって勝敗を測りながら生きることになる。
実際に自分が欲しいものであるとか好きなことであるかは関係ない。ただ勝負に勝ったと思うためだけにそんなことに人生のほとんどのエネルギーを費やす。
その結果できるのが、愛情のない家庭、死にたくなるほどストレスフルな仕事、醜く太った動かない肉体、不健康な精神だ。
一体それのどこが勝利だといえるのだろう?
人生は他人との勝負なんかじゃないのではなかろうか?
そう思うのは私の間違いだろうか。
自分が好きなことをして、満足して喜んで暮らせればそれでよいのでは?
働いたら負けだと思っている、という言葉を目にしたことがあるけれども、これこそが仕事が勝敗だと思い込んでいることの確かな証言ではなかろか。
勝ちも負けもやりがいなんかも関係ない。仕事とはただ、欲しいものや必要なものを手に入れるための作業でしょう。
なんの疑いもなく刷り込まれたままに労働を勝敗だと思うバカがあふれているから、働くことに抵抗が出てきてしまうのでは?
ただ、自分が本当に欲しいものや本当に送りたい生活を支えるための対価が必要だからその分だけ働く、それでダメな理由が私にはまったく想像できません。
そんなに勝敗に囚われた結果、勝つために無意味に消耗し、負けを恐れて行動ができなくなった人々があふれて、せめてもの一矢を報いたいと他人を巻き込んで自爆する。
そういうことなのでは?
そんなことに生まれ持ったすべての時間と力を使い果たして、一生おっぱいが揉めない人生ってなんだよ。
意味あるのそれって?
ほんとにそれでいいと思ってるの?
そんなことより、自分のことを好きだと思ってくれてるおっぱいがいつでも触れる位置にあってくれることのほうが一億倍大事だよ私には!!
そしてそれは、人類という物がこの世に存在を初めて以来、普遍的に行われてきたことだろうよ。
その、大切で当たり前なことを見失っている現代社会の人々の生きかたは、明らかに狂っているとしか思えない。
バカみたいなマウンティング競争や足の引っ張り合いより、おっぱいのほうが大切に決まってるだろそんなもん!
命の根本を離れた生き方は、やはり間違っていると言わざるを得ません。
自分の身体という現実を離れ、他人から刷り込まれた実態のない情報を離れて、本当に自分にとって大切な物を知り、そのために生きるということが、本当に生きるということなのではないでしょうか。
そのためには、自分と他人の区別をつけなければならない。
自分と他人はまったく違う人生を生きているまったく違う存在なのだということを知らなければならない。
近代産業社会が刷り込んできた、みんな同じでみんな同じ社会に住んでいて同じスポーツで競争するんだよ、という虚構から離脱しないとそれは難しい。
そして、そのようなことを自己の確立というのではなかろうか。
自己の確立が出来るということを、本来は大人になるというのではありませんか。
いい子のまま大人に言われた競争に必死になって順位に一喜一憂しているのは、幼児性が抜け切れていないのでは?
すなわち、自分と他人の区別がついていない。
人が欲しがっているものを一緒になって追いかけてばかりいないで、本当に自分が欲しいものを知らないと人生は空っぽではないでしょうか。
大人になってもどころか年寄りになってもそのままというのは、人格形成に失敗したのだとしか思えない。
それは大衆蔑視なのではないかと言う意見はあって当然でしょうが、私にはこのように思えて仕方がありません。
他人は関係ない。他人よりももっともっと自分の肉体の内にある本当のことに目を向け、耳を澄ますことから始めるべきではないかと思います。
自分を知ることからすべてが始まる。