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伝人から見たドラゴン・ボール 4・亀仙人

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 妖怪仙人の強盗団とのドラゴン・ボール争奪戦をひとまず終えた悟空は、旅の途中で出会った亀仙人の元でカンフーの修行をすることにします。

 元々、ただ山野で生活をしていて、ブルマに巻き込まれただけの野生の命が、自我に目覚めて自分のやりたいことをして生きるようになった訳ですね。

 面白いのは、このやりたいことというのが、亀仙人の元でカンフーの修行ということです。

 ここに如実に中華的世界観が出ています。

 というのも、悟空が興味を持ったのはカンフーのはずなのですが、その老師となるのが亀仙人、つまり仙人なのです。

 もし西洋的な格闘技、武術の価値観でいうなら、修行先はジムや軍隊であったことでしょう。

 しかし、功夫の修行で師匠は仙人。

 これが、功夫は格闘技ではなくて思想であり文化だということです。

 タオや仏教の指導者が、修行の過程として用いるのがカンフーな訳です。

 もっとも、まだ少年期でただ強くなりたいだけの悟空や仏僧のみなりのままでいる(非常に無礼なことです)クリリンにはそこは理解できていなかったとは思うのですが。

 ここからようやく亀仙人について語れますが、彼の特徴というのは二つ。

 ハゲとスケベというのが目に付くところではないかと思われます。

 この、ハゲと言うのは小林くんことクリリンともかぶってしまっており、ちょっと不思議な設定です。

 おそらく編集者もその辺りを気にしたのではないでしょうか。

 しかし、このハゲには意味があるように思います。

 というのも、完全に憶測なのですが、実は亀仙人、モチーフは鶴だったのではないかと思われるのです。

 なにせ、中国武術と言えば日本人がすぐ言いたがるのが北派と南派ということ。

 そして、南を代表する拳と言えば鶴です。

 名前自体に鶴と入っていなくても、我々蔡李佛も鶴拳類に含まれますし、太祖拳、五祖拳などにしても同様、鶴拳類に含まれます。

 そのため、まったく鶴っぽくない沖縄空手さえも、鶴拳の子孫だと言われています。

 亀仙人のいでたちや住まいをみても明らかに南方。これはもともとは、鶴拳の仙人で頭がツルツル、みたいなイメージがまずあって、そこから後に名前を鶴とセットの生き物の亀に換えたのではないかなあ。

 連載が続くと、実際に鶴仙人というライバルが出てきますので、これは考えられることのように思うのですけれども。

 憶測はおいておきまして、次はスケベということなのですが、これ、功夫において欠かすことのできない性の力(セクシャル・エネルギー)の表現ではないかと思われます。

 功夫においては、気功の原則で身体を動かしますので当然、気というものについて学び続けることになるのですけれども、その気というもの、ご存知のように陰陽思想で陰と陽に分かれます。

 この陰と陽とはつまり、男性と女性です。

 そのため、陰陽の調和によって命を十全に活用する気功においては、この男女の調和という物が非常に重視されます。

 その性の方面の気功というのが、房中術と言うカテゴリーの物です。私もお世話になっている重要な極意ですし、師父からもよくその運用において注意をされていた根源的な物でもあります。

 これは体内の気の内、軽い物は脳に至って神という物となり、重い物は下腹に沈んで精という気になるという考えのもとに行われます。

 そして、その精と神を合わせて精神と言います。

 陰と陽の二つの気が人間の精神を作っているという考え方です。

 そのため、これを活性化すると艶福になるなどと言われています。

 亀仙人ほどの達人、この精の運用において非常に強い部分があったのではないでしょうか。

 彼がはじめてかめはめ波を披露する時、呼吸法を用いて上半身ムキムキの姿になりますが、これこそ気功によって精を上にあげて用いている時の表現のようにも見えます。

 その時に彼が言う「セクシーじゃろ?」という言葉、そこにはこの精を活用しきった達人の深みが込められていたようにも受け取れます。

 功夫においては、セクシーであることは非常に大切なのです。

 

                                                つづく


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