天下一武道会を経て、師父である亀仙人の元から修行の旅に出た悟空は非常に興味深いヴィランに遭遇します。
それは、レッドリボン軍です。
私は昔から彼らの存在が非常に面白く感じていて、妖怪は全員宇宙人だったとかいう面白くない設定変更しないでずっとレッドリボンとかと追いかけっこしながらインディ・ジョーンズみたいな冒険をしてれば面白かったのに、と思っているくらいでした。
というのも、彼らがパルプ小説的な悪い軍隊(バッド・カンパニー)であり、そのメカなどのガジェットがプラモデル大好きの鳥山先生の画力をものすごく発揮してくれているように思ったからです。
そんな大好きなレッドリボン軍ですが、一つ疑問がありました。
「悪の軍隊ってなに?」ということです。
なにがしかの国があって、その国を支配している悪の軍事政権というのならわかります。
その場合、敵組織の名前として○○国や○○将軍の軍隊、となるのは分かるのですが、レッドリボン軍、明らかに所属先が見えなくてなんか勝手に軍隊だけで成立しているように描かれています。
これこそが、中華的世界です。
そう、彼らは独立した軍隊、すなわち軍閥なのです。
大戦時風の装いそのままに、彼らは東北軍や国民党軍、関東軍などの軍閥の類で、国土を根拠とせずに自主採算で勝手に運用されている。
このような軍閥の存在が、古代から中国の歴史を動かしてきていました。
項羽と劉邦なんていうのはまさに勝手にあつまった軍隊同士が軍閥として争うお話です。
土地と言う物に紐づけされた日本の官領制度に慣れた我々からすると分かりにくいのですが、日本でも平安時代の公家政権までは武力というのは土地に根差さない独立した物でした。悪党と呼ばれた武士の前身がそれです。
名前のレッド・リボンと言うのは、訳すと紅い布。すなわち、歴史上の反乱軍閥が頭に赤い布を巻いていたという、何度も現れた紅巾党からのイメージでしょう。
ちなみに、我々鴻勝蔡李佛門の所属していた太平天国党も、紅巾党、紅巾賊と呼ばれていました。
浅田次郎の満州もの小説のサーガでは、中国の王朝には龍玉という皇位の具体が伝わっており、それを手にした者が皇帝となるのだとされています。
それを巡って張作霖の東北軍閥や袁世凱の民国政権、国民党軍、共産党軍などが動乱を繰り広げるのですが、それってドラゴン・ボールなんじゃ……。
つづく