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幻想の日本社会 3・チベットの変遷

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 前回は砂漠や草原の倫理を追ってきました。

 また違った厳しい自然環境の場所に今回は目を向けましょう。

 世界でも最も高い山をいただく山脈がある、チベットです。

 チベットは古くは吐蕃と言われており、中華圏の一つでした。

 吐蕃の勢力は強く、四川や雲南あたりまではチベット系の人々と文化が広まっており、そのあたりの国を支配下に置くために大唐帝国はだいぶ苦労したと言う記録があります。

 この因縁は極めて長い物で、中華帝国最後の時代である清朝を支配していた騎馬民族の女真族は、チベット仏教を国教としており、ダライ・ラマを国父と仰いでいました。

 女真の旧名である満州族というのは発音をマンジュ族と言い、これは日本で言う文殊菩薩のことです。

 チベット仏教の菩薩信仰に由来しているのです。

 そのために、大戦期には日本の宗教家たちが満州国という場所に仏教徒の楽園、地上の極楽浄土を作ろうと画策したのであり、日蓮宗に染まった関東軍の士官たちが暴走をしたのです。

 そして、その仇敵である清朝を打破した革命政権を母体とする現在の共産党中国がチベットを弾圧するのは、決してこの歴史が無関係な訳ではありません。

 そのチベットでは、元々一妻多夫であったと言います。

 これは、ヒマラヤという過酷な環境で、ちょっと強風が吹けば凍結して人が死に、暖かければ雪崩で村の半分が流されると言った命が容易く失われる環境だったためだという話があります。

 確かに、夫に死なれてしまった寡婦が出にくくするには、死亡率が調整出来ない以上こうなることには合理性があります。

 かくして子供が誰の子なのかという個人所有の意識は薄れ、みんなで新しい一族の命として育てることになります。

 これは、同じ雪国である日本の東北地方においての寒村の状況と比較しても共通性が見られるのではないでしょうか。

 対人間よりも対自然が苛烈である場合の対策であるように思われます。

 こうして、人間は社会と言う物をその大前提の状況に対応させて形成し、運営してきたということが分かります。

 しかし、社会が歴史を持ち、成熟してくるとそこに倒転が生じてきます。

 狩猟民族から農耕、商業民族に発展したチベット族では、今度は女性があまるという問題が発生したようです。

 同様に、自然の脅威から身を守ることが叶ってきた多くの社会の中で、自然の中では価値が薄く社会の中でだけ役立つ物を奪い合って人同士が争うということが深刻化してゆきました。

 チベットでも、同じ一族の中で誰かが嫁を貰うと、妻同士が重大な権力争いを興すために家系を分派するということが行われたそうです。

 

                                                      つづく


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