老師の門では、基本練習の時間に猴拳の基本拳をやります。
長い生徒さんが曰くには「老師の本門は猴拳だ」であるようなのですが、どうも教室が広くないので最近はメインでは教えていないとのことだそうでした。
昔の、日本人中国武術家の本に「実戦的な猴拳」という文章がありました。
内容は、猴拳というとサルの物まねをする見世物のように誤解されるが実際はそうではなくて、伝説にある通背白猿という仙猿の、体内で左右の腕が繋がっているという話に由来して命名された拳法が猴拳類だと言われて居ている、とのことでした。
個々の門としては通背拳、通臂拳、劈卦拳などがそのグループに相当するそうです。
通背、通臂はともに「トンベイ」と発音されるので、中国ではあまりこの差異は意識されないそうです。
過去のプレスにあった猴拳類の先生方のインタビューを読んでも「うちは正式には通臂だな」とか「うちは通背と書くけど通臂でも間違いではない」と言っている先生が居たりします。
老師の門は正式には通臂であるようですが、その門の過去の有名な先生が出版された本のタイトルは「通背長拳」とあるので、特に過去の先生方ほどこの差は気にしていなかったのかもしれません。
同じトンベイには「通備拳」と言う物があるのですが、これは猴拳類である劈卦拳に翻子拳と八極拳を加えて「通じて備える」ことをして一門とした物なので、間接的には関係があるのですが、他の猴拳類とは一線を画す固有の門派となっています。
この猴拳、過去に何度かここでも触れてきています。
回族武術の段階の一つとして私は意識してきました。
この看板にもついている「通背」「通臂」というのは私の門では体幹を四階構造に分類したときにその最上階の四階と呼んでいる部分です。
三階が心意で言う龍腰、二階が一般的な中国武術で言う腰に当たり、一階が日本人が腰だと思う部分、骨盤と仙骨の部分になります。
この、四階の部分の動き活用したのが通背、通臂であるということであると思われます。
老師が曰くには、このように身体と両腕を繋げて鞭のように活用することを鞭勁と言って、整勁とは違う物だ、と教わりました。
蔡李佛拳は劈卦拳などと一見似ていると思われるようなのですが、実は全然違います。
何が違うというと蔡李佛は整勁なのです。
劈卦拳は大聖劈卦門という流派が香港で盛んで師父や老師が良く接していたのだそうなのですが、大師は「あれは全然違う物だから決して真似してはいけない」と常々言われていたそうです。
師父などは熱心に研究に行って向こうの方と仲良くなったらしく(初めはビル内試合でだったようですが)、親友が出来て一緒に他の武館に試合をしに行ったりしていたそうです。
その頃にプレゼントされたという大聖劈卦門と書かれたトレーニング・パンツを練習中によく履かれていました。
話が長くなってしまいましたね。今回はここらで切り上げて次回に続けましょう。
つづく