元アイドルの方がやっているということで話題になっていたラーメン屋さんが、醜聞の基になっているようですね。
私は元々ラーメン好きでしたし、このお店がもろに活動範囲内にあったので存在は小耳には挟んでいました。
ただ、もう数年前からラーメンを基本的には食べなくなっていましたし(例外的にはある。ただ、趣味としてお店巡りをしたり新店を食べに出かけたりはしなくなりました)、アイドルも知らないのでまったく存在を気に留めてはいなかったのですが、正直「いつものうさんくさい話だ」とは思っていました。
昔あった「焼肉 小倉優子」のような物ではないにしても、若い女の子が生き馬の目を抜くような飲食業界、それも競争の激しいラーメン業界で、というのは、正直ゲスな発想ですが「ハゲ頭の店であろう」という偏見がありました。
実に下世話な、人の努力を認めない勘繰りです。
個人的にはこういう考え方は嫌いなのですが、元々犯罪業界で仕事をしてきて、探偵のようなことをしていると、人の絡むことは必ずあさましくて想像する限りもっともゲスな物だ、というところから想定してゆく癖が付きます。
ストーカー問題の依頼などが来ると「どうせ依頼人が悪いことしてんだろ」と言う処から当たりますし、結果、私がかかわった事件はみんなそれでした。
もちろんそうではないこともあります。
しかし、そうだとしても近しい方から洗っていくことは必要です。土台が分からなければ立脚点が分からず、取り組み方が難しい。
このラーメン屋さんが評論家やオタクを相手に業界の問題点を訴えた時には「胡散臭い業界だからまともにやりたい人にはそういうこともあるだろうな」とは思いました。
もう二十年も前のモキュメンタリー番組で、参加者がラーメン屋さん開業をめざしてがんばるという内容の物があったのですが、その番組の中でさえ、開店時に行列ができてみんなが喜んでいるところに参加者の一人が「お客が来てるって言ったってラーメンおたくみたいな連中ばっかりじゃねぇか。そんなんでいいのか!?」と吠えるというシーンがありました。
評論家と、それに紐づけられたラーメンオタクからなるシェアというのが、問題を抱えたものであるのだろうな、という認識を初めてもったのはこのときでした。
そのような流れの中で、評論家が出禁になったということは筋が通るお話のように聞こえました。
私が関心を持ったのはその先の流れでした。
当の評論家が、その流れをネタにした文章を公開しました。
文章でご飯を食べている人間としては実にもっともなことです。
それに対して、当のラーメン屋さんでも評論家でもない、外野の素人衆が「おっさんの文体が気持ち悪い」ということで大騒ぎをし始めた、というのが今回この文を書いていることの理由です。
というのも、彼の文ややっていることは確かに気持ち悪いのですが、それは単におじさんの気持ち悪さなんですよ。
古本屋さんに行って、原田宗典や椎名誠、糸井重里なんかのエッセイ(小説の方ではなくて)を読めば、同じタイプのヴァイブスが感じられると思うんですね。
これは、大槻ケンヂ曰くの「昭和軽薄体」と呼ばれる一種の文章のジャンルで、オーケン当人もそうだし、爆笑問題の太田光だって手を出していました。
下手すりゃ村上春樹だって片足突っ込んでた。
評論家の方の文体が気持ち悪いって騒ぐのは、白黒映画観て「色ついてねえじゃん!」とか「古臭い!」とか「なんだそのセリフの読み方!」騒ぐのと同じことではないでしょうか。
そういう文脈があったという基礎知識がない世代が、過去の物を見て違和感を感じるのは当然です。
ですので一つにはここに、世代間の変化と言う物を見ることができます。
もう一つは、基礎教養がないままに自分の感性だけを中心として、他者を攻撃して騒げる人たちがこれだけいるんだなあ、ということです。
平素から問題提起している大衆問題がここにもはっきりと見えました。
仕事の時の目では、可能な限りそのような大衆の下世話な視点で物を見ると上に書きましたが、今回の件もまさにその有効性を示すような展開を見せました。
現状までの話ですと、少なくとも評論家側が言っていたような、店舗側の不払い問題は現実であるようです。
このお店の産地偽装問題も発覚し、案の定裏に居たハゲ頭の存在も表ざたとして取り上げられています。
またこの人が重犯の前科もちで、常習的な犯罪者であるということもリークされはじめています。
「どうせ胡散臭い業界の連中のくだらない足の引っ張り合いだろ」という第一印象は、なんのひねりもなくそのまんまだったようなのですね。
元々そういう店だってのは業界では有名で、それに付け込んだ評論家が舐めた態度を取った結果が事件として表面化した、と言ったところなのでしょう。
想定通りの下世話な話がそのまま置き続けている身もふたもない世の中というのは、私にはとても詰まらんです。
どうしてこのような世の中になってしまったのでしょうか。
つづく