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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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卓球チームの監督

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 週末の朝に聴いているラジオのスポーツ番組が、すこぶる面白い。

 私はテレビは観ないしスポーツも一切見ないのですが、それとは関係なく良い番組なのです。

 というのも、特定の何かのスポーツの実況や結果を扱う番組ではなくて、スポーツにまつわる人々の価値観や活動を聴くという番組なので、人間や世の中のことを識るのにとても優良な放送となっています。

 番組のジングル自体も、人間のリアルを追求するということを明言していて、その意図が大変力強く視聴者に伝わってきます。

 先日この番組に出ていたのは、沖縄にある卓球チームの監督さんでした。

 この方自体は、まったく卓球経験がない。

 ある種の事業家のような方でした。

 少年時代にお父さんが失踪をされたそうで、苦労して自分で学校に通い、就職して後に起業、そこから国会議員に立候補をされた物の、落選されたというかただそうです。

 この方に、その経営手腕を買われてチームから声が掛かったというのが卓球に関わるようになったきっかけだったようです。

 元々、別に関心もなく断るような案件だと思っていたそうなのですが、チーム側のプレゼンに卓球と言うのは、それほどお金もかからず、5歳から始めて15歳でメダルを取れるスポーツなんです」と言う言葉があったのを聞いてやる気になったのだと言います。 

 ご自身が苦労して学校に通っていたという経験をしているので、その頃の自分のような子たちが楽しめる物を作ると言うことに興味を持ったようでした。

 野球やサッカーなどは、あまりにお金がかかるしそれが結果を結ぶ確率はあまりにも低い。

 しかし、卓球にはその土壌がありうると見たようです。

 これ、実は私の理念や目的のような物と半ば重なっています。

 フィリピンからアルニスを持ってきた目的の一つは、お金をかけずに、自分一人で向上して楽しめる武術を子供たちに提供したかったからです。

 私の暮らしてきた環境の周りには、貧しい子たちや親の目の届かない子たちが沢山居ます。

 また、外国人で暮らしが不安定な人たちも沢山います。

 かねてから書いてきましたが、その土地に生まれた以上はヤクザになるか職人になるかしか無いと言うような町が沢山あります。

 そういった場所で、悪い方に落ちて行く子たちの歯止めとして武術が役立てばという思いがありました。

 ただ武術の場合には、あくまで個人的な物であり、世間的な成功云々とは関係がない。

 むしろそこを相対化することが私の目的でした。

 しかし、この社長さんは貧しいところから社会的成功に至った方なので、そのテンプレートは社会的成功に向かうのでしょうね。

 このような動機付けで卓球チームの監督に収まった人なので、選手たちにもスポーツ的な口出しはほとんどしないようです。

 ただ、理念については非常に厳しく、それを理解してくれる選手しかうちには要らないと断言されていました。

 スポーツ能力があるというだけではダメなのです。

 この方は、選手に「試合中、もう駄目だと結果が見えても全力を尽くせ」と言っていると言います。

 これはありがちな根性主義ではありません。

 この方がチームを運営する目的が、スポーツを通しての子供たちのヴァイタライズなので、試合を見ている子供たちのために最後まで頑張る姿を見せろというのです。

 それがこの方の思う、自分のスポーツ選手の仕事なのですね。

 その広報活動によって、若者たちに希望を与えて地域を活性化させる。

 沖縄と言うのは、とくに経済的に厳しく、失業率が極めて高い土地です。

 そこで若者たちに希望を与えるためには、選手が頑張る姿を率先して見せることに効果があるというコンセプトなのでしょう。

 これは非常に納得のいくお話でした。

 同時に、ではスポーツ選手と言うのは政治のプロパガンダではないか、という見解にも繋がります。

 これ、百獣の王氏の言う「何億稼いでもそれだけではアスリートは大人が作った枠の中で遊ばせてもらっているだけだ」というお話と一致するように思います。

 政治家や実業家、企業などの広報活動の道具です。

 しかし、このような政治の道具でなければ、彼らが職業運動家としてやってゆく道はどれだけあるでしょうか。

 コーチとして手づから教えて対価を得ると言うことは可能かもしれません。

 でも、それこそ百獣の王氏が言うように、それでは幾らも稼げない。

 選手が二十四時間のうちに何人に教えられて、それでどれだけ対価が得られることでしょう。

 プロ興行が無い前提で考えると、現状のような採算を取るのは無理でしょう。

 なにせ顧客の多くが起業か個人かという差が大きい。

 この監督さんの見通しも、百獣の王氏の見解も非常に納得が行きます。

 彼らがいまのような活動と発信をすることは、スポーツ選手への自覚を促すことに繋がると思われます。

 私が非常に大事にしている、自覚と言う物です。

 ただ運動能力が高いと言うだけで世の中からスポイルされて、未熟なまま年を重ねてしまうという危険を避ける確率が上がります。

 また、そのような人たちが引退して根性主義を押し付けるような馬鹿な指導者になるということへの対策にも通じるればいいと思います。

 結果的に同じことを要求していても、その意味を理解して意図を持って行うと言うことはまったく違う。

 こういうことを考えることが、多くのこの社会の人間は非常に苦手です。

 中身とかわかんないけど同じ事すればいいんでしょ? という形式主義を革めることからしか、本質が変わることはないように思います。


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