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血族社会観から見たアジア身体文化史 2・陰の強

 前回は中東の聖書宗教を引き合いに、中華圏における宗族文化の発展思想について書き始めました。

 砂漠宗教では、神との契約を土台に発展が進んでゆきますが、アジアにおいてはどのような信仰に繋がったのか、というところなのですが、これは中国では福の神、財産の神、そして健康、長寿の神様に要約されます。

 この三つをさして、福禄寿と言います。

 三位一体にこれの化身となった福禄寿という神様もいますね。

 このような中華の神々は主にタオが信仰化した道教に観られるのですが、これらの土着信仰の中にはインドの神々からの流入も見られます。

 ことに私の身体文化の側面から注目したいのは、健康長寿を意味する「寿」の概念の領域にある神々で、これは土着信仰化した仏教の神様としてインドから入ってきている物が見られます。

 ヨガ行が中華にて発展した気功においては、これら性神の信仰が流入されました。

 これらの土着信仰は、道教ならぬタオの思想、気功では比喩として削除されており(タオでは信仰は否定されているので)、精という気の三つの様相の一つとして分類されています。

 タオの元祖である老子の著書においては「すべての生命は玄牝門よりいずる」とあります。

 玄牝門、邦訳の仕方によって「黒谷の水の溢れる門」などと表現もされますが、すなわち、黒いメスの門という意味です。

 これは陰陽思想における陰を意味しているのですが、具体としては女性器だと解釈されます。

 ここに、民間信仰としての性神信仰に繋がる性的エネルギー(精)の重視を見ることが出来ます。

 これを陰の尊重とし、そこに陽の気の調和が至上と見なされることで、男女の和合こそが上述の「産めよ、殖えよ、地に満ちよ」という指針においてもっとも重要であるということに得心が行きます。

 中国社会では女性が強いと言いますが、それはこの陰と陽が対等として調和しないとならない、という思想が根本にあるからなのではないかと推測される次第です。

 宗族と言う血族による勢力意識がすべての社会概念の基礎にあると考えた時に、これは必然のことだと言えましょう。

 この宗族間の繁栄合戦が中華的世界の中心活動だとみなした折に、その世界の頂点をしめる存在の易姓革命ということが起きます。

 これによって、そのシーズンのチャンピオンである宗族が制定される訳です。

 ここで中華史の原初に立ち返ると、神話の中にある夏、商、周という王朝の時代から現実的な社会の始まりである秦の時代になったときに、中華では封建制度と言う物が終了します。

 科挙と言う登用制度が始まって、能力主義によってあらゆる人間が社会への参画という権利を獲得します。

 この科挙制度が、宗族制と両輪になって中華史を形成していると私は考えます。

 古代からの宗族の考え方で言った場合には、その繁栄に最も直接的な効用があるのは、易姓革命と皇家との婚姻でした。

 宗族の中から皇家に嫁ぐ娘を出し、あわよくばそこから次の皇帝を生み出せば、一族は中華世界の頂点に立つことになるのです。

 これは歴史上数回しか行われていない易姓革命よりもずっと可能性が高い。

 つまり、宗族の発展は女性にかかっていたとも言えるのです。

 中華史上、後宮の愛妾たちが強大な影響力を持ってきたという話は枚挙にいとまがありません。それがこのことを証明していましょう。

 やはり世界観として陰陽の調和に具体性がある。

 老子の徳「すべての生命は女性器より生じる」というのは恐ろしく政治的な戦略支持のように聞こえてくるではありませんか。

 いまだに中国の歴史ドラマで後宮物が一大ジャンルとして隆盛しているのは当然だと思われる次第です。

 一方、タオと対となる儒教思想においては、科挙による正面からの宗族の発展が画策されていました。

 

                                                                    つづく

 

 

 


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