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あらためてタオについて 15・朱子

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 今回からはタオが如何にして儒教に吸収されるようになったのかということをお話するのですが、そのためにはまず、それ以前の儒教について触れなければなりません。

 儒教の祖、孔子様というのは歴史上でもまれにみる巨漢で、中華圏では現在でも2メートル級の人のことを「孔子ようだ」とか「孔子の子孫だ」などと言うことがあるくらいです。

 その上で戦車を乗り回して弓の名人で群雄割拠の諸侯の参謀をする人だと言うのであちこちの諸侯に招かれていた人なのですが、その語るところが仁義、徳、などについてなので期待外れ扱いをされて結局はどこにも仕えることの無かった人という経歴の人です。

 この人の説くのは俗に「徳治制」と呼ばれる治世の論であって、決して軍事などではありませんでした。

 孔子様の言われる「徳」というのは老子の言う「徳」ではなくて本当に人徳とかの徳、モラルの徳です。

 儒教ではその時代の基本的な考えと同じく、鬼神と呼ばれる霊を祀っていました。

 鬼神と言っても現代人の思う鬼ではなくて、霊、死んだ人の魂のことです。

 人間と言うのはみな、先祖の命あって生きている物なので、そういった先祖の霊を祀ることで現世での幸福を願おう、というのがこの祖霊信仰、鬼神信仰の基本だと考えて良いかと思われます。

 ですので、人ひとりひとりの身はみな先祖からの物であるので身体髪膚これを傷つけず、大切に扱わないとならない。

 すなわち、古人の利益は先祖を祀るための行為である、というちょっと利己的なにおいのする思想です。

 この思想がどう治世に繋がるかと言うと、鬼神を祀るということは天への信仰があるということなのですね。

 これは、天や地をあくまで自然科学の対象だと考えるタオとは対照的になります。

 天を信仰してそれが全くあれば、それはご利益として返ってくる。

 では、その天を祀る最大の司祭と言えばだれであろうかと言うと、それは天に選ばれた人間、すなわち天の御子である天子である、ということになります。

 天子とはすなわち支配者です。

 この天子が君主の徳を備えておれば、天は喜んでその御代は豊かで安寧な物になる。

 逆に天子が暗君であるならば余は乱れ、災害や疫病が訪れる、という考えです。

 全然哲学じゃない。完全に、どこの地域にも見られるシャーマン・キングを頂点とする原始社会の考え方です。

 しかし、その天子の天への供物として人徳と言う物を説き、それがどのような物であるかを語り続けたところが孔子様が歴史に残した大偉業です。

 すなわち、儒教は中華にモラルという物を広めました。

 それまでは、お腹が減ったら人間くらいは食べてしまう社会だったのですが、それを「そういうのは祖霊の意思に反するところで罰が当たるよ」みたいなことを言って止めて行きました。

 おじいちゃんおばあちゃんを大切にしよう、とか泥棒はいけない、嘘を吐くのはやめましょう、みたいなのも儒教によって広まった物の考え方です。

 これは、中華と言う世界的文明の成立にちょうど合致していたのでしょう。

 中国はかなり早い段階で封建制を辞めて国が設定した役人によって全土が管理されるという官僚制を取り入れた国です。

 この官僚の採用試験が科挙と呼ばれる物で、この科挙を受験する人たちはすなわち、みな儒者でした。

 これはもう、文化全体が儒教に染まらざるを得ない状況です。

 しかしなぜ、そのようなことが可能だったかといならば、これは文明が農本制に移行する過程であり、それによって人口が爆発的に増加、よって他民族国家を形成するために共通のモラルが必要であったからであろう、と言われています。

 ですので、生まれ始めて成長しだしたばかりの国、社会、という概念の中でうまくやってゆこう、上手に生きてゆこう、そしてその社会と言う物の運営に参画してゆこう、という考え方になります。

 蛍の光、窓の雪、それらを灯りにして苦学して出世したというようなお話がありますが、それこそまさに儒教的メンタリティです。

 努力、根性、出世。

 日本人が大好きな奴ですね。

 この思想は江戸時代に徳川家によって幕府の基本思想として制定されました。

 儒教は数度のバックアップをしているのですが、そのうちの一度をなした朱子と言う儒家の思想が江戸幕府に強い影響を与えました。

 彼は儒教をアップデートした人だと言われていて、現行の儒教はみな彼の思想の後進に当たると言われています。

 それくらい偉大なので、特に朱子派の儒教のことを朱子学と言ったくらいです。

 野球部が坊主頭なのも男尊女卑も、みんな朱子学の落とし物です。

 皆さんは、四書五経と言う言葉を聞いたことがおありでしょうか。

 儒教の教本となる四つの本と五つの経典を指す言葉なのですが、この四書五経を設定したのが朱子です。

 これらのうち、四書が基本編で五経はだいぶ難しい上級編とされています。

 私も四書までは読んだのですが、五経は手が出ていません。

 五経の中でも有名なのは「易経」で、これはいわゆる辻占の易者さんの経典ですね。

 八卦思想と言われる物を土台に世界を観立てる学問であるようです。

 儒教も五経も読んでないOLさんのような女の人が結構易経をライフワークだなどと言っていたりすることがあるのですが、これは要するにこの易が信仰である儒教の中の占いの部分であるからでしょう。

 成都に残っている古伝の易経は百巻もあって、一読するだけで十年はかかると言います。

 その内容に合わせて占いをするとなるとこれは大変なことになります。

 恐らくはいずれ、誰かがPCにこれを入力して占いAIを作ることになるでしょう。

 この易経の八卦思想ですが、これ、陰陽思想や五行思想などの流れにあります。

 タオと儒教の間を繋ぐものです。

 なぜ繋がっているのかというと、基本編の中庸というのがもうだいぶタオ系であるからです。

 長くなってきたので次回に続けましょう。

 

                                                  つづく

 

 

 

 

 


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