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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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手の延長

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 先日、ホグワーツA・K・A鍼灸学校の授業で、トイレット・ペーパーに鍼を刺すという初学者向け実習がありました。

 以前にも書いたように、日本の鍼法は江戸時代に大幅なアップデートが行われて、太くて硬い中国式の鍼を刺す物とはだいぶ変わってきています。

 毫鍼と言って、文字通り髪の毛ほどの細さの鍼を相手に気付かれないくらいにそっと刺します。

 近年では科学技術も進んでいてこの鍼の性能も上がっており、より細く、痛くない鍼に進化しているのだということです。

 実際、私などは見ていても刺されたのに気づかないくらいに感触がありません。

 無痛鍼などと言う言葉は決して誇張ではないように感じます。

 しかし、となると反面、これは刺すのが少し難しい、という部分が出てきます。

 髪ほど細くてよくしなる鍼となると、下手がいじると曲がってしまってうまく的を射ません。

 最悪折れてしまったりします。

 最近も、プロ野球選手に打たれた鍼が折れたという事故のニュースがありましたが、これはおそらく選手の筋肉が凄く強かったためでしょうね。

 そのくらいに現代の日本式の鍼はデリケートな物のようです。

 これをトイレット・ペーパーのロールに刺すというのは中々難しいことです。

 講師の先生も「良いトイレット・ペーパーは硬いから相当上手くないと刺せない」とおっしゃっていたのですが、確かに。

 そして、そう言われてみるとどうすれば出来るのかを考えたくなるのが私の気性です。

 結果、思い当たったことがありました。

 それは、功夫です。

 まとに力を加えて深層に届かせるというのは、功夫においては重要な構造ではありませんか。

 そして私はカンフー・マスターだ。

 ということで、兵器を用いて相手の表層を穿ち、内部に力を届かせる方法を持って鍼に取り組みました。

 すると、見事、決して折ることなく、髪の毛の細さの鍼でトイレット・ペーパーを深くまで穿つことに成功しました。

 これは、ある意味では出来て当然のことです。

 なぜなら、そもそも私が鍼を学んでいる動機が、鍼法と言う物が中国武術家の間に伝わってきた技術だからです。

 そしてそうであるからには、当然鍼を刺すというのは中国武術家の肉体で行われていることです。

 となると、それはカンフーで鍼を刺すということではありますまいか。

 中国武術でよく言う言葉に「兵器は手の延長」という物があります。

 剣でも槍でも、手の技術、すなわち拳術(日本では拳法という方がメジャーですね)の延長であり、道具ごとに独特の個別の動かし方をする物ではない、という意味です。

 すなわち、鍼は手の延長と見つけたり。

 やっぱホグワーツ最高だな。 


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