我々がイメージするギリシャのヴィジュアル・イメージと言えば、一つには石膏像ではないでしょうか。
当然素材の色のままに真っ白で造形された人物の姿は、白人種を象ったのであろうと無意識にメッセージしてきます。
しかし、実際にはそんな真っ白なギリシャ人などは居ませんでした
これらデッサン素材の石膏像は、あくまで美術の授業で必要な利便性の都合上、結果白になっているだけです。
ですが、大英博物館に貯蔵されている古代ギリシャの人物彫刻などにも白い物が多い。
また、アメリカなどで大きな美術館や図書館などに行くと同様の彫刻が飾られていますが、どれもみな白い。
これ、元ネタは大英博物館らしいのですよ。
大英帝国の植民地時代、有名なツタンカーメン王のミイラがそうであるように、ギリシャ各地からも沢山の調度品がイギリスに奪われました。
そのようにして集めた古代ギリシャの物を、なんと博物館は「白人優位主義にとってこちらのほうが都合が良い」ということで、係員に銘じて漂泊してしまうのです。
元々の色合いは、トルコ美術などに見られる彩色がされていたようなのですが、それらをみんな落として、古代ギリシャがアジア文化に染められていたという事実を無きものにしてしまいます。
文字通りのホワイト・ウォッシュ!
まさかの物理攻撃でした。
これによって我々は、ギリシャ=白亜というイメージを刷り込まれる訳です。
もちろん、白亜のパルテノン神殿と言ったイメージもその原因となっていることでしょう。
しかし実はあれ、あんな海辺に長期間放置されていたために漂白されていただけだそうです。
もとはやはり極彩に塗られていたと言います。
ですが、なにせ紀元前何千年みたいな時期から海辺に晒しておいたら、そりゃあ漂白もされましょう。
そうか、海の仕業か。英国女王とポセイドンのせいなんだな、と思ったらそれも違う。
ポセイドンというのは、元々内陸部の、地面の神様だと言います。
もう、全然私たちが思っているギリシャの常識が崩れてゆきます。
この経緯が面白い。
元々、古代ギリシャと言うのはエジプトやトルコと言った地域の人々が暮らし、その文明が広まっている場所でした。
アフリカ文化やアジア文化の土地ですね。
そこに、ヨーロッパの内陸部から元ギリシャ人とも言える部族の人たちが移住してくるのですね。
彼らは移民なんですね。
なぜ、先住していたアフリカやアジアの人々が元ギリシャ人ではないかと言うと、古代ギリシャの文化が彼等内陸部から南進してきた人たちの物であるからです。
「古代ギリシャ文明」の世界観の中核は彼らの物なんですね。
つまりはどういうことかと具体的に言うと、彼らの文化が古代ギリシャ文明の世界観になった、ということだと私は解釈しています。
もっとも端的に言うなら、ゼウスは彼らの神だった、ということです。
彼らの信仰する神話体系が古代ギリシャの世界観になった。
ここで先に書いたポセイドンの話になります。
元ギリシャ人は元々内陸部に居て海を見たことのない人たちだったので、彼らの神話の中には海の神様が居なかったのです。
そこで、地震の神様であったポセイドンが、海を揺らす神様だということで海の神様に移行したそうです。我々中華系伝統文化圏の人間の謂う「封神」ですね。
アメリカの村上春樹ことニール・ゲイマンのすごい小説「アメリカン・ゴッズ」では神とは人間の信仰によって存在している物だということが描かれています。
ギリシャ神話の神々も同様に、移住によって存在の在り方が変化して行っているのです。
つづく