前回はヨーロッパの内陸部に居た元ギリシャ人たちが地中海際に移住してきて、そこに彼らの信仰していた神々をもたらしたことで古代ギリシャ文化と言う物が始まった、ということを書きました。
しかし、実はここからが面白いところです。
原ギリシャ人たちの神話では、大神ゼウスの妻であるヘラ神が居なかった。
彼女は元々、古代ギリシャの言葉で言うトロイ、いまのトルコの辺りの女神だったというのですね。
それが、地中海にゼウス信仰が下りてきた時に、現地で勢力を誇っていたヘラ信仰が「二人は夫婦」だという形で融合された。
これは面白いですね。
このようにして設定だけでなく、本当に信仰ごと二つの大きな神様が結婚して結びつくのです。
文化の融合の面白さを感じます。
ゼウスは全知全能の雷の神様である、というのは、元々乾燥地帯で農耕に適していないギリシャの土地に作物をもたらすのが雷の季節の豪雨であったからだ、と言うお話があります。
日本で言う台風と同じですね。
時に大きな被害が出る天災でもありますが、そのおかげで地に水が与えられて恵みをもたらす。
日本で台風と言えば以前に書いた一つ目の龍、一目連という神様が居て、やはり豊穣と生殖をイメージしているようですが、ギリシャでも一つ目の神族がいますね。
有名なサイクロプスです。
この一つ目の巨人は、ゼウスの祖母である女神ガイアから生まれたとされています。
ガイアと言えば大地の女神。
彼女はゼウスたちの前の世代の神々タイタン族の母ですが、タイタンたちとゼウスたちオリンポスの神々が戦ったときには、サイクロプスはオリンポス勢に味方したと言われています。
ですので、その後もオリンポスに存在し続けています。
これはやっぱり、一つ目の巨人と言うのが台風のモチーフで、ゼウスの一派だということを示していたのかもしれません。
台風のことをサイクロンと呼びますが、これはサイクロプスが語源だとも言いますね。
となると、ギリシャ神話では同じく台風を怪物として表現したテュホンという巨大な怪物が居ます。
これは怪物たちの王で、世界の覇権をめぐってオリンポスの神々と対等の大戦を繰り広げられたというある種の邪神的な存在です。
それも当然、このテュホンはゼウスの妻のヘラが一人で身ごもり、生み出した子供だからです。
つまり、他の神々と兄弟の存在なのですね。
で、このヘラですが、結婚の女神であるとされています。
これはあるいは、ゼウスと婚姻を結んだことで古代ギリシャ文明と言う巨大な世界観そのものを作り上げた神であるからかもしれません。
もしその婚姻が破れたらどうなるか?
ゼウスとのまぐわいなくヘラが一人で子供を産み続けたら、テュホンのような存在が地上に増えて世界を支配することでしょう。
だとすると、テュホンと彼の眷属の怪物たちというのは、原トルコ文化に継承されていたより古き神々だったのかもしれません。
こちらでいつも書いている、神々と性信仰の話になってきましたね。
次回もこの話を続けましょう。
つづく