前回はギリシャ神話の代表的英雄、ヘラクレスのことに触れましたね。
このヘラクレス、若い時にヘラの報復を避けるために身を隠して育てられたそうです。
彼を育てたのはギリシャ人ではなく、ケンタウロスだったと言います。
ケンタウロスと言うのは現在では半人半馬の人たちを称しますが、確か最近聞いた説ではこれは「速い人たち」みたいな意味で、知識や学問に精通していたりという、平均的な古代ギリシャ社会の中央部の常識とは違った知識や技術を持つ人たち全般を意味していたということだそうです。
ですので、半人半馬のみならず、海のケンタウロスも居たと言います。
いずれにせよ、ポリス社会においていまだ一般化していない技術や学問の持ち主ということで、ヘラクレスが彼らのもとで暮らしていたのはすなわち、学を積み修行をしていた期間だとされています。
ここでもう一つケンタウロスに関する学説を紹介しますと、これはアジア人を指していると言います。
半人半馬が象徴となったのは、その後の歴史に渡って常にちょいちょい攻めてくる、騎馬民族であったからだ、というお話です。
源義経=ジンギスカン説と言う珍説が昔ありましたが、それとは違ってヘラクレス=ケンタウロスの弟子というのはいちおう
つまり、ヘラクレス、アジアの身体文化の継承者だということが出来ます。
これはこのページ的に非常に大きな意味を持つポイントです。
となると彼が持っている武器が通常の剣ではなくて棍棒だというのが、すわこれ中国武術の元祖なのではないかと思いたくなるのですが、いえ、元々ヘラクレスは古い資料では普通の剣を持った姿で描かれているそうです。
それが、のちにキャラ立ちしてくるにつれて棍棒キャラになったらしくて。
ですし、さすがにそんな古代の騎馬民族が現在の中国武術に通じる物を持っていたということは考えずらいですね。
けれども、ヘラクレスが古代ギリシャからある格闘技、レスリングの名手であったとされているのは、実はモンゴル人の看板格闘技であるブフ(モンゴル相撲)に通じるアジア式レスリングであったかもしれないとは言えるかもしれません。
というのも、ユーラシア大陸北部に伝わるレスリングというのは、家畜を倒して抑えつけて、毛刈りをしたり搾乳をしたりするときの技術から生まれたという話があるのですね。
これは恐らく、放牧をしていたケンタウロスたちが体得していたとしてもおかしくないような気がします。
つづく