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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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ギリシア幻想 7・古代ギリシャの悲観主義

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 今回は軍神アレスのことから始めましょう。

 アレスは、イケメンです。

 イケメンで腕自慢で手癖が悪くて残酷だという、アメリカのドラマに出てくるフットボール部に居るいじめっ子みたいなイメージの神様です。

 一方で彼の美点は「身内には優しい」という物で、典型的な俗悪な権力者そのもののような造詣がうかがえます。

 このようなキャラクターのため、ギリシャ神話においては彼はえてしてヒールの役割を担っており、英雄神話においてはやっつけられる悪神の役割を演じることが多い。

 ある時は英雄に敗北して大けがを負い、オリンポスに逃げ帰ってゼウスにそのことを言いつけます。

 悪さをして相手を怒らせて喧嘩になったら負けて今度はパパに言いつけるという、そういう人間性(神性?)の持ち主としてキャラが立っています。

 ゼウスはこれに激怒します。

 もちろん、アレスに対してです。

「軍神だとか言っていきってるくせに人間に負けおってこの恥さらしが! 自分でやっといて負けたくせにピーピー喚くな無節操な軟弱者が! わしはオリンポスの神々の中でお前が一番嫌いだ! 粋がっているだけで中身のない薄っぺらなバカ者が!」と。

 要するに、甘やかされた特権階級のぼっちゃんなんですね。

 なぜヘパイストスと彼がこのように対比的な兄弟として描かれているか。

 これは、古代ギリシャと言うのが、哲学を重んじる文明を持っていたからだとされています。

 既得権益の現世利益に対しては低く見て、逆境を耐え忍ぶ工夫と思索を尊んだ。

 それが、アレスとヘパイストスという二柱の神として描かれているというのです。

 で、ですね。

 ここからが重要です。

 ギリシャ神話の終わりって、誰も知らなくありません?

 最終回観た覚えのある人、おられます?

 居ないでしょう?

 これ、やはり古代ギリシャ人のこの哲学的姿勢が反映しているからであるようなのです。

 元々、古代ギリシャ人の哲学的思想は、中国の老荘や孔子様と同じく、昔は素晴らしく良かったけど、いまは良くない、という姿勢を持っています。

 このスタンスの元、古代ギリシャでは、オリンポスの神々は輝かしいが、やがてその欠点が助長されてゆき、人間もまたその欠点がどんどん増して行っていて、世の中はどんどんバカで悪くなっていっている、と見なしていたそうなのですね。

 となると、どうなるか。

 ギリシャ神話の最終章、トロイア戦争が起きる訳です。

 

                                                 つづく

 

 


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