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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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ギリシア幻想 8・身体哲学

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 誰も最終回を知らないギリシャ神話ですが、どうやらトロイア戦争が現状最後のエピソードだとされているそうなんですね。

 その終戦後から自分たちの歴史が始まっていると古代ギリシャ人は考えていたらしい。

 このトロイア戦争、人間の英雄たちが敵味方に分かれて相打ち殺しあうという物語で、恐らくはイギリスのアーサー王物語で同じくそれまで活躍してきた英雄的な騎士たちが敵味方に分かれて殺しあうという構造になっていることの元ネタでしょうね。

 古代ギリシャの英雄=半神たちはそれぞれ守護する神々が居るので、神様たちも敵味方に分かれてこの戦いに関与します。

 また古代の英雄たちが如何にして戦死して神になったか、神々が大戦争を起こして殺しあったかという話は、中国の封神演義とそっくりなのも面白いところです。

 ローマ時代にシルクロードを通してお話が広まったのかもしれません。

 元々、神々の王妃であるヘラはトルコの女神で、原ギリシャ人がヨーロッパの内陸部からゼウス信仰を持って地中海に移住してきて以降、二神の婚姻が行われて夫婦だという設定になったということを最初の方に書きましたが、ここでもヘラはまた西側と分離、トロイ(トルコ側)の守護神としてオリンポスのあるヨーロッパ側と敵対することになるのです。

 母である彼女について、他の神々もまたトロイに加勢し、神々は二分されました。

 思い起こせば、神々全体を滅ぼしかけた魔物の王テュホンを一人で産んだのもこのヘラ。

 英雄たちをいたぶって怪物たちをけしかけてきたのもヘラ。

 つまりは、西側と東側の相克の歴史が彼女を通して描かれ続けてきていたとも感じられます。

 これがギリシャ神話の最後のシーズンだと言うことを前提に縦軸を見ると、神々が元々現れてから、ずっと「父が子供に殺される」という新陳代謝が語られて来たことがよくわかります。

 タイタンはオリンポスの神々に滅ぼされ、そこからは半神たちが生まれて神々に敵対します。

 まぁ、中にはミノタウロスのようにダイレクトに初めから魔物であったという神々の子供もいる訳ですが、彼等もまた自分と同じく半神の英雄たちによって打ち倒されます。

 そして英雄たちは王となり、老いると今度は怪物となって、次に現れた若き英雄に滅ぼされる、ということがギリシャ神話の円環構造です。

 この構造に対して古代ギリシャ人は「時代が経つほどどんどんバカになって力も弱くなっていく」と言う史観を持っていた訳で、つまりはトロイア戦争の後に自分たちの時代が来たということは、昔は神々だったはずの自分たちの血脈が、長いこと時間をかけて現時点の有様になり下がったのだ、と思っていたということになります。

 この厭世観がかなり真相を捉えていたことになります。

 紀元前8世紀くらいに、イタリア半島に居たラテン人が、南進して王政ローマと言うポリスを拓きました。

 後にこれが勢力を拡大して古代ギリシャの地政学的領域を支配、ギリシャ文明の後継国となります。

 これが、ローマ帝国です。

 で、ですね。

 このローマ帝国の元祖というのが、アレスの子供だということになっているのです。

 アレスが人に生まれた子供が捨てられて狼に育てられ、それが大人になって国を興した、という神話があります。

 そう、あの、古代ギリシャ人が俗悪の化身として忌み嫌ったアレスの血族がこのローマ帝国の開祖なんですよ。

 古代ギリシャでは、厭世的な哲学の姿勢が尊ばれていました。

 学問を重視し、理性を良しとし、民主制を敷いていたのが古代ギリシャ文化です。

 しかし、ローマと言えばもう、贅沢、貴族的、俗悪、残酷、大量消費に差別がひどいというのが定説です。

 つまり、これはアレス的価値観なんですよ。

 これは、古代ギリシャと言うのがヨーロッパから南進してきた内陸部の原ギリシャ人、アジアのトルコ人、アフリカ人などの多民族都市国家空間であったのに対して、ローマがラテン民族の国家であったということに直結していると言って良いでしょう。

 ローマの国風と言うのは、衝動的で感情を重視する、という物だったのですよ。

 つまり古代ギリシャ人が見なしていたように、どんどんバカになっていると言える。

 その流れの中で、じゃあギリシャ人たちは一体どうしていたのかというと、居なくなったのです。

 ギリシャ人という人たちはこの地球上から存在しなくなります。

 一体なにが起きたのかというと、212年に当時のローマ皇帝から「ローマに住んでいる者はみなローマ市民になれる」というお触れを出しまして、その結果、6世紀になるころにはもうみんなローマ人になってしまって、古代ギリシャ人と言う物は一人もいなくなるのです。

 その後、近代になってから現在のギリシャに繋がるギリシャという国が現れるのですが、この時の国民はローマ帝国市民の末裔です。

 古代にヨーロッパ内陸部から地中海に移住してきた原ギリシャ人とは別に関係のない、ローマ帝国に移民してきた人たちの子孫でたまたまその時にギリシャの地域に住んでいただけの人たちです。

 このようにして西洋圏を飲み込んで行ったローマ帝国がやがてその中心思想をギリシャ神話の焼き直しであるローマ神話から、キリスト教にシフトして行った結果、白人優位主義とキリスト教が一体化して、いつもここで書いているような歴史の流れを作ってゆくことになります。

 白人優位主義文化圏の宿敵として中東の文化圏がありますが、これ、ローマ帝国以降の物です。

 古代ギリシャと言う地政学的空間を共有していたトルコやアジアは、帝政ローマが白人優位主義に至ったときには、トルコ帝国という物にシフトしていました。

 そして北部アジアからはアジアの騎馬民族が襲来してローマ帝国を弱体化させました。

 ここで黄禍論という物が生まれる訳です。

 ヘラクレスがアジア人の元で育てられて優れた英雄になったという古代ギリシャの価値観から、優れているがゆえに恐ろしいケンタウロスたちとしてのアジア人への視点が養われてゆきます。

 騎馬民族に弱体化させられたローマ帝国の一派であるカトリック圏の国々が、強大化したトルコ帝国の領海を回避することで大航海時代が始まりました。

 私たちのフィリピン武術、エスクリマがこれによって生まれました。

 カトリック内の腐敗によって清教徒(プロテスタント)たちが生まれ、白人優位主義を受け継いだこれらの国家は今度は陸路でインドから中国へと植民地政策を進めることになりました。

 明の時代の中国武術の発展はこの侵略に対するための物でした。

 これらの流れの中でカトリック国が発見し、プロテスタントが獲得したアメリカが、いまでは白人優位主義政策の最大の勢力となっています。

 アジアに流れた落ちこぼれの白人種はロシア帝国を拓き、その史観を受け継いだ大統領が今、「自分たちはアジアの国ではなくヨーロッパの国だ」という白人優位主義に基づいて東欧への戦争を起こしています。

 すべて、ギリシャ神話にまで遡れる価値観のお話です。

 我々が、このような歴史の流れを意識せずして、いまの自分たちの居場所を理解することは恐らく非常に難しいと言えましょう。

 

 さて、結論めいたものが出たところで、せっかくエスクリマと功夫のお話をしたのですからもう一つ身体文化についておまけのお話をしたいと思います。

 私が現在も取り組んでいるキャリステニクス、すなわち器具をもたらさない練功法のことですが、これは日本では「プリズナー・トレーニング」という言葉で広く知られることになりました。

 現代アメリカ人が資本主義化の中で見失った、古代文明から伝わる秘伝のトレーニング方法が、世俗の時間の流れから隔絶された刑務所の中で脈々と継承されていた、というのがそこに伝わる縁起話です。

 これを世に広めたカリスマ指導者、ポール・ウェイド先生は、このキャリステニクスを「古代ギリシャから伝わった物だ」と繰り返し主張しています。

 刑務所と言えば白人優位主義者たちが幅を利かせる、民族主義の対立の場でもあります。

 その中でウェイド先生がこの秘伝を継承するにあたっては、恐らくアーリア人ブラザー・フッドなどの民族主義者組織との付き合いなどもあったのでしょう。

 このような白人優位主義的な逸話をして、ウェイド先生は「なのでキャリステニクスはギリシャ彫刻のような身体を作る。スパルタ兵もそうだった」と称していますが、ここまでのお話を読んでくださった皆さんにはこのお話は鵜吞みに出来ないことがお分かりいただけるでしょう。

 ウェイド先生はその一連の著書の中で「ギリシャ文明が滅びた時、キャリステニクスはトルコ文明に残っていて、それが近代になってからヨーロッパに逆輸入されていまに至っている」と著述しています。

 もちろん、ここまで読んでくれた皆さんにはこの意味がお分かりいただけることでしょう。

 つまり、古代ギリシャは初めからトルコだった。よって、キャリステニクスはずっとアジア文化として伝わっていた。ヨーロッパには、たまたま古代ギリシャの時代に地政学的に同じ文化を共有していたので伝わっていただけだ。ということです。

 これで私がかねてから主張している、キャリステニクスはインドや中国などのアジアの身体文化であろう、という説を補強することになるかと思われます。 

 もちろん、ヨーロッパから南進してきた原ヨーロッパ人が元々ゼウスと共にキャリステニクスも保有していて、その威力によって古代ギリシャ文明を拓くまでに至ったのだ、という可能性はあります。

 だとすると、それが文明を共有していた時にトルコ(トロイ、トラキア)に伝わり、分派として現在に伝わったのだということも言えます。

 いずれにせよ、身体に関することを、ただのフィットネスとしてとどめず、このように身体文化、哲学として掘り下げるということは、有史以来の人類の営みの歴史そのものについて触れることが出来る。

 これは非常に面白いことではありませんか? 

 私はね、しょっちゅう現代式の白人的な身体の使い方を否定し、素人の動きだと見なしています。

 その真意は、このように、本当に面白い大きな物の存在を多くの人々に共有したいというところにあります。

 だって、めちゃめちゃ面白いじゃん。

 


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