以前に、西洋のフィットネス界で「レスト・スクワット」と言う物がちょっと怪しい動きを見せているということを書きました。
これはいわゆるしゃがみこみのような、日本人としたら常識的な動作を、東洋の神秘、ロシアの秘密、のような形で取り上げた物でありました。
というのもこのしゃがみ込むという動作、白人種や黒人種は腱の長さや骨格の構造上出来ない人が多いということだそうなんですね。
踵を付けてしゃがむということが難しいそうです。
なので、同じ白人種でもアジア系の血が入っているロシア系には可能で、ゴプニクと呼ばれる白人貧困層などが椅子もないので路上でズボンを汚さないようにして座り込んでいる姿は日常的だそうです。
一説には刑務所で汚い床で服を汚さないための待機スタイルだとも言いますが、だとしたらある種のロシア式キャリステニクスの一部だと言えるかもしれません。
ロシア人の中でも西側の血強いためかこのレスト・スクワットが出来ない人は「お前は西側のスパイだろう」と言われてしまうそうですので、ちょっと面白い。
このレスト・スクワット、実は私が学んだ気功の動功の中にもあり、またその動功が私に「あれ、これはヨガではないか」と気づくきっかけを与えてくれたものでもあるので、非常に気になっている存在でした。
この動作を行うと、仙腸関節が広がり、神経伝達物質の働きが活性化します。
また、股関節とリンパ、血液の流れと言う物の関連も有名であるので、確かになにがしか効果があるのだろうとは思われます。
私が教わったときには、脊椎から脳の膜までに渡っての気の活性化の物だというように認識しました。
尾骨、仙骨から脳までの脊椎の活性化と言うのは、ヨガ、そして気功における重要なテーマです。
と、ここまでは以前のおさらいです。
今年に入ってから日常の練功にこのレスト・スクワットの要素を入れてきました。
ホグワーツに通うので疲労が増すため、リカバリー効果のある練功をルーティンに増やしたのです。
そうして毎日これをしているうちに、ふと気が付いたことがありました。
いまどきのスクワットについてです。
レスト・スクワットのように回復系の物では無くて、筋トレとしての動的スクワットについてです。
私などは十代の時に格闘技をしていたため、プロレスラーは一日千回スクワットをするのだという話を真に受けて半月板をぶっ壊して二十代の頃には生涯にわたる機能障害を抱える羽目になったのですが、いまではそのようなトレーニングは否定されているようですね。
うさぎ跳びをしないのはもちろん、スクワットも変化していると聴きます。
なんでも、いまのフィットネス界ではつま先より先に膝を出さないでスクワットをやるのだとか。
これ、いまの私のレスト・スクワット的練功に共通しています。
いままで意識していなかったのですが、ふと思い立って鏡でフォームをチェックしたら出ていませんでした。
このやり方で、回数も少なくやるというのがいまどきのスクワットだそうです。へー。
ただ、今回の記事を書くに当たって調べてみたところ(またYOUTUBEだ。女性のお尻がアップになっているスクワットのサムネイルがおススメ画面に溢れました)、膝をつま先より出さないには二つのスタイルがあることが分かりました。
一つは私がするように、完全に可動域の下限まで腰を下ろす物けど膝は出ないという物で、もう一つは膝が出る高さになったらそれ以上は落とさないという物でした。
後者は旧来の私のスクワットと同じ系統だと解釈できます。昔はこれをハーフ・スクワットと呼んでいました。
確かに、大腿部を効率的に鍛えて膝への負荷を減らすには合理的かもしれません。
一方で、前者の腰を完全に下ろす方では、背骨をのけぞらせるという要素がありました。
胸を張って膝の上に乗せるようにして重心を集めるやりかたがメジャーのようでした。
こうすると、ウェイトを使ったスクワットにそのままのフォームで移行できます。
しかし、これも私のやり方ではありません。
胸を張り、お尻を出すとバランスが良くなるというのは西洋式の運動法の常識ですが、私たち伝統アジア系の運動ではそれを術としては否定するのです。
鳩胸とでっちりは原則違います。
そのやり方では、上述した脊椎の湾曲が強化されて神経伝達物質の働きが良くならない、という考えです。
逆に、西洋式体育ではお尻を上げて胸を出すというのが筋肉を活用する良い姿勢だとされがちですが、これによって肩や腰の筋肉に負担がかかります。肩こり腰痛の元ですね。気血の流れが滞るのですが、もちろん西洋的な考えではそんなことは考えません。
そういうやりかたでは純粋に筋肉に負担をかけて力を活用することは可能ですが、練功だとは言い難い。
この間、五祖拳の発勁練功をしている時に気が付いたのですが、私はこのレスト・スクワット式の運動をその発勁の土台としています。
白鶴拳系の姿勢を見てみると、その基本がこの形になっていることが分かります。
西洋的体育の美観からすると、ちょっとぎょっとするくらいに背骨の形や立ち方が独特です。
異様と言った方が正直かもしれません。
おそらくこれは、元々根幹にあったこのような練功から派生して拳術に至ったということなのでしょう。
私が師父からこの基本のレスト・スクワット式の練功を教わったのは、白眉拳を教わっていた頃だと記憶しています。
白眉拳でもまた、熊腰と言って白鶴拳によく似た一種異様な立ち方を強調します。
その後、私は勧められて蔡李佛に完全に移行してしまったのでこの立ち方をしないようになったのですが、いま五祖拳にくれば明らかに共通性が感じられます。
ちなみに通背拳(通臂拳)ではこれはしません。
この辺りは、身体の動かし方の根本からそれぞれの門派を教わっていないと触れることのないアジア文化の要素だと思われます。
こういうところを一つ一つやってゆかないと、五祖拳でもうっかり西洋式スクワットの土台でやってしまうかもしれない。
それでは術を理解するのはきっと難しいことでしょう。
やはり、土台を大切に、きちんと理解をしようと勤め、正しい内容を教わることが重要なのです。