ある一流企業の肩書付きの男性が、免許の更新に行かれたんだそうなんですね。
その時に、同じ部屋で講習を受けた多くの人たち、まぁ、車やバイクの好きそうな職人さんたちのような人たち、そういう人たちと暫時同じ時間を過ごすことになりまして。
後で「あぁ言う人たちを普段見ることがないから貴重な経験だったよ。いつもどこに居るんだろうね、あぁいう人たち」と言われたんだそうです。
これは非常に示唆に富んだ正直な感想だと思いました。
一流企業に勤めていて、世界情勢の観察や海外への出張やらが日常生活である中年男性からすると「あぁいう人たち」というのがどれだけ眼中に存在していないかがよくわかることです。
でも、その人たちがこの人達の住む家を建てたり普段使っている道路を補修したり、スーパーに物を届けたりしているんですよ。
私も全部経験しました。
そういう人たちは、運転免許を使って暮らしを立てている可能性が非常に高い。
つまり、経済を成立させている下部構造の物流を担っていることが非常に多い。
けれども、より大きな部分で物を動かしている人たちには存在すら感じられていない。
私たちは一日中粉塵にまみれて家を建てる大工をしていましたが、その図面を書いている設計士の先生方はお洒落な知的労働者です。
同じ物件を建てていても、決して住まう世界は分かち合っていません。
更に言うなら、いま、両者を含んだこの国の労働環境は世界レベルで下降して言っています。
もう十年も前から言っていましたが、私が修行をしていた東南アジアでも、今後の日本の若者が修行をしやすい環境ではなくなっていきつつあります。
すでに日本での賃金より、タイでの賃金の方が上がっているのだそうなんですね。
インドのような大国では、現地日本企業で管理職を求めると日本の本社の職員より賃金が上がってしまうのだということを聴きました。
その土地でのホワイトカラーの当たり前のレートで払うとそうなってしまうのだそうなんですね。
だとしたら、その時代に下場で生きる人々の賃金は一体どうなってしまうのでしょう。
そういうことは、若い頃から世界に目を向けていないと見えてこないことだと思われます。
自分の周りのコンビニのガレージと作業現場と行きつけのスナックくらいにしか興味を持っていないまま生きていると、何一つ分からないまま搾取をされてゆく。
この、もっとも社会から奪われて不平が募っている層に対して、政権与党は賢く的を絞って愚民化政策の集中砲火を送り続けて、うまく洗脳をし続けている。
彼等最も被害を被っている層が、もっとも熱心に国の言いなりになる層へと塗りこめられています。
これが貧しいということでしょう。
賃金だけが貧しいと言っている訳ではありません。
そのことに気付かないほどに貧しい。