映画のTROYでは、トロイがアジアだという認識が描かれていました。
冒頭のエーゲ海周辺の地図ではギリシャが「アカイア」ではなく「グリース」と書かれていたのがご愛敬ですが、こういうところに当時のポリティカリティ・コレクトネス的葛藤が垣間見られます。
この地図に続くスパルタでの宴会のシーンでは、ベリーダンスが行われていました。
つまり、ギリシャ文明とはアフリカ、アジア文明だということが冒頭でもう描かれているのですね。
しかし、一方でパリス、ヘクトルらはトルコ人のようにはあまり見えない外見となっています。
ヘクトルの方はまだ見えないこともないのですが、演じているのはユダヤ系の俳優さんです。
パリスはオーランド・ブルーム。
トロイア王はイギリス人の俳優さんです。
おそらく、大人数による大合戦を描く映画で、半数の兵士役を中東系の人でそろえるのが難しいなどの事情もあったものではないでしょうか。
片や、トロイに攻め込むアカイア勢に目を向けますと、こちらはオリジナルのアカイア軍のどうしようもなさがだいぶ希釈されています。
大アイアースは登場するのですが、小アイアースやトリオとなる射手は出てきません。
ギリシャ軍の貪欲さ、どう猛さは、大王アガメムノン一人に集約されて描かれます。
出征はヘレン出奔を大義名分とした侵略戦争として描かれており、アカイア側はあくまでも政治的な動機で動いていることが描かれます。
決闘でパリスが死に、戦闘の理由が無くなった後も「いま兵を引けば弱腰とみたヒッタイトが攻めてくるに違いない」という地政学的な事情で戦争が続くことになります。
トロイ側は情愛によって戦争を引き起こし、アカイア側は政治的理由で引き返すことが出来ないということになってしまって、悲劇が繰り広げられる、という反戦的とも言える経過が描かれます。
この情勢の中で、反抗的な一下士官として翻弄されるのがアキレスです。
このころのブラピは、ジェームス・ディーン的な、ナイーヴで仲間を思う若い小隊長を後援していました。
というか、それ、マーヴェリックですね。トップガン部隊を率いる反抗的な下士官って。
彼は安全圏に居る政治家たちの欲望で兵士たちの命が浪費されるのを惜しむ一方、自分は天才的な兵士で戦闘狂であり、戦うことの快楽を求めてやまないというエリート戦士として描かれています。
トップガンぽいですね、やっぱり。
つづく