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ハイタカが林を穿つ

 先日、老師から通背劈卦拳の鷂子穿林を教わりました。

 動き自体は前から教わっていたのですが、それがそういう名前で、その名の通りの要領を持って行い、どのように使うのだという意や用法の部分を教わることが出来ました。

 この鷂子穿林、ないし鷂子鑽林という言葉は、昔、心意拳で習いました。

 通背拳類と心意拳類は、回族武術という文化の中で繋がった物です。

 ですので、招式の名前も共通しているのですが、かなり動作も共通しています。

 両者の大きな違いは用勁であり、通背拳で実用の部分を十全の物とした後、秘匿されて来たという心意の勁を入れると、陽の勁が暗に転じて、その内容がより深まるのだと聞いたことがあります。

 ですので、心意を使う時には心意の練習法の形で使うのではなく、あくまで中身が心意で外形は長拳や通背の動きで用いるのだ、と習ったこともあります。

 実戦なら通背、というのは古い中国武術好きのなかでは良く聞かれた言葉ですが、その中にはさらに、心意の勁まで備わっていた可能性もあるのだというと功の深みは測りがたい。

 また、80年代くらいの日本中国武術界で「あの人は出来る」と言われていた太極拳の先生が、実は通背を備えていて、実戦ではそれを使って強かったということはよく知られた話です。

 まぁその先生が「盆踊り」と揶揄されていた太極拳を強い物として知らしめた部分がありますので、この存在は存外に大きな影響を武林にもたらしていたのようにも思います。

 綿裡藏針ならぬ綿裡藏通背ですね。

 さらにこの通背拳類、実は太極拳とパッケージされて広まった八卦掌と同じ武術だという先生も居ます。

 先に挙げた、実戦では通背だったという太極拳の先生、この先生が所属していたグループでは、初めに太極拳を習い、後に形意拳を習い、最後に八卦掌で完成という構造を持っているとのことですが、こうなると八卦掌を完成系とみているがためにそこに通背が介在していたとも見ることが可能です。

 そして、老師に見せていただいた揺子穿林、私は素人なのでまったく見識が無いのですが、その目からすると何度か見たことのある八卦掌に見えました。

 その通背の中に心意の勁が入っているのだとしたら、これは回族武術のシステムがその裏に透けて見えてくるではありませんか。

 この辺りの文脈の流れなども、各派をしっかりと学んだ識者が居ないと本当には分からない部分です。

 衰退し続ける日本の中国武術界では今後それが叶うかどうかは分かりませんが、志ある誠実な研究者の登場を待って、私も学び続けてゆきたいと思います。


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