倭寇側が封神演義キャラクターを出してきたなら、官軍側からも強力なキャラクターが出てきます。
ことの起こりはこうです。
二大王の妖術にかかって死亡した中に、官軍の老将軍であった万表という人の娘婿が居ました。
もともと万表というのは、王直こそが倭寇の元凶であるのでこれを討つべしという上奏分を出していた人です。
それだけの計画があった彼はすでに根回しをしていた少林寺より武僧隊を招聘します。
到着した中に、九尺ばかりの鉄の棍を持った和尚が居ました。
よっ、まってました正統少林拳! 少林の棍と言えば看板兵器です。
和尚は二大王の妖術を見るや「うむ、聞いたことがある。これは胡蝶陣だ」と「知っているのか、月光!」と言いたくなるような見識の深さを発揮します。
和尚は官兵たちの髪に花を挿させて、自身は片手に傘を持ってそれを振ります。
するとあら不思議、少林棍法の守護神である緊那羅王のご加護か、妖術は破れて逆に二大王らは金縛りにあって身動きが取れなくなります。
和尚は鉄棍で二大王の頭を一撃に討ち取ります。
兵たちは倭寇たちに殺到するのですが、この時代の兵への報酬と言うのは、勝利しての略奪品でした。良い鉄は釘にはならない、良い人間は兵にはならない、という言葉があるように、彼らは盗賊団のような人間です。たちまちに略奪が始まり、兵士同士での奪い合いが始まったそうです。
これを見て和尚は傘をたたんで法術を解きました。
倭寇たちは潰走して去っていった、というのがこの戦闘での流れですが、え、世界史の話だったよね、これ? という感じでしょう。
同じころにフィリピンではスペインが大砲で海賊と戦っていた時代に、こちらでは妖術対砲術です。
しかし、これにはきちんと考察があります。
この胡蝶陣、妖術ではなくて陣形戦の方法だったという話です。
これは倭刀術の戦法であり、倭刀は左右に変化に富んでとらえがたい、と記録されています。
このような倭寇戦法を「寇術」と呼んだりもしていたそうです。
文字通り軍師の二大王が扇をふるってこれを指揮していたものを、和尚が少林の陣法を持って傘で指揮をして破ったということなのでしょう。
しかし、もちろんこれで抗争が終わったわけではありません。
官軍側では少林寺が加わり、倭寇は二大王が敗れたことで、かえって戦火は拡大してゆくことになります。