前の記事で中国武術の本当に深いところに至るまでには、危険な領域もあるということを記しました。
それの動画がこちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=sHqsFcDidvU
こちらの老師はすでに見事な勁に化しているのでもう過程の段階は動きからはほとんど見えません。
指先で触れただけで身体ごとぶっとばす見事な発勁の持ち主です。
が、それでも通ってきた道の痕跡がまだ残っています。
それが発生です。
西洋のゴーストや中国劇の幽鬼のようなおぞましい声を出していますね。
これ、私も一時学んだものでいわゆる驚勁なのでしょう。
人間の神経に宿っている恐れや驚きの情を誘導して神経の働きを活用するという物です。
動物を見ていると、そのような状態になると毛が逆立って全身が戦闘モードになったりしていますね。
人間もその痕跡として、鳥肌が立つようなことがありますが、だからと言って必ずしも驚いたり恐怖を感じたからと言って潜在能力が即時発揮できると言うわけではありません。
それを、開発して肉体に眠っていた攻撃性を引き出して活用するものが驚勁です。
驚の気は七情の一つであり、腎に宿ると言われています。
腎の気は全身の気功の土台を為すものであり、先天の気、すなわち元神は腎と繋がっているとも言われています。ダイレクトに本能を活性化する手段であります。
もちろん、動画の先生ほどになってしまえばエゴと肉体の反応を完全にコントロールして切り離せているのですが、それまでの過程で非常なストレスを肉体にかけることになりますし、精神もそれに引っ張られて不安定になる、とても危険性の高い手法です。
とはいえ効果が出始めるのは早いので、多くの自己流探究者がこれが真伝への道なのだと勘違いして入り込んで正気を失ってゆきました。
きちんと一時的に引き出した狂気や悪意を切り離したり修めたりする練功法を知らないと、心身ともにむしばまれてゆくことになります。
私の師父も一時期非常に苦しんだと言いますし、他にこの系統の短勁の偏差に苦しんだ身内もいます。
有名なところでは、あのブルース・リーの怪鳥音と細かい痙攣、ピーキーな反射が思い起こされます。
彼もまた、この系統の短勁を自己流で模した結果、神経と脳をむしばまれて変死したケースです。
いまだにこのやり方を無手勝流で模索している人が日本にはたくさん居ますが、きちんと完成するとこの動画の老師のようにきちんと化して、過程で使っていたおぞましい形態は不必要になります。
出した物はきちんとしまうことが大切です。
それを伝えるために引用しましたが、あまりこれを見すぎないように気を付けてください。引っ張られて不安定な状態に近づく可能性もあります。